人材育成生成AIが「壁打ち・メール作成止まり」になる理由と抜け出し方
2026/10/08
「生成AIを全社員が使えるよう導入したものの、壁打ちとメールの下書きくらいでしか使われていない」というのはAI研修のご相談でよく伺うお悩みです。
ツールの環境は整っているのに、議事録や文章の下書きでの活用どまりで、ライセンス費用に見合う効果を社内に説明できない。AIの推進担当の方ほど、この状態に焦りを感じています。
生成AIが壁打ち止まりになるのは社員の意欲やツールの性能の問題ではなく、自社の業務を元にした成果物を作る機会がないことが原因です。この状況から抜け出すには、業務を1つ選んで棚卸しし、AIに任せる部分を決めて、成果物を完成させるところまでをやり切ることが近道です。この記事では、その進め方と、実際にAI研修で自動化タスク5本を作った導入事例を紹介します。
生成AIが「壁打ち・メール作成止まり」になる
3つの理由
生成AIが壁打ちやメール作成で止まる理由は、「汎用的な使い方しか学んでいない」「自分の業務のどこに使うかが決まっていない」「使った結果が成果物として残らない」の3つです。どれも、自社の業務とAIをつなぐ工程が抜けていることから起きます。
調査データも、定着が文書作成や調べものに偏っていることを示しています。テックタッチが2026年7月に従業員1,000名以上の企業の生成AI推進担当者319名に行った調査では、最も定着している業務は「文書・資料の作成・編集」が39.0%、「情報収集・調べもの」が23.9%で、この2つで半数を超えます。課題の最多は「使い方の理解や習熟度に差がある」(48.3%)でした。総務省の令和8年版 情報通信白書でも、日本企業で生成AIの活用率が最も高い業務は「議事録・メール作成補助」(約7割)です。
1. 汎用的な使い方しか学んでいない
プロンプトの書き方や機能の紹介を学んでも、自分の仕事に当てはめるところで手が止まります。教材の題材が「架空の商品のキャッチコピー」のような汎用的なものだと、研修の後に「で、自分の業務では何をすればいいのか」という問いがそのまま残るためです。
Copilotを導入しているある食品卸(従業員約750名)からご相談いただいた例では、外部から提供されたAIのeラーニングの受講率が約2割にとどまりました。活用が進まない理由として挙がったのは、「自分の業務にどう当てはめればよいか想像できない」という声です。
2. 自分の業務のどこに使うかが決まっていない
業務の棚卸しをしないままAIを使うと、「思いついたときに試す」使い方になります。その結果、相談相手や下書き作成といった、業務の流れに組み込まなくても済む用途で止まります。
Geminiを全社員が使える環境を整えたある小売業(従業員約500名)では、主な使い方が「壁打ち、メール返信文の作成」にとどまっていました。ご相談の中では、「業務改善の観点からAIをどう活用すべきか、方向性が定まっていない」という課題も挙がっています。
3. 使った結果が成果物として残らない
AIで文章を整えても、その場限りで終わると社内には何も残りません。自動化の手順や業務ごとのAIの指示書のように「他の人も使える形」になっていないと、使う人と使わない人の差は広がる一方です。
Copilotを全社導入して約1年になるある卸売業(従業員約540名)では、担当者が利用ルールや使い方を周知してきたものの、部署や個人で利用頻度に差がついていました。
壁打ち止まりから抜け出す3ステップ
生成AIを壁打ち止まりから業務に定着させるには、業務を1つ選び、「棚卸し」「AIと人の役割分担」「成果物の完成」の3ステップを順に進めます。使い方を広く学ぶより、狭い範囲で1つを使える形にするほうが、定着は早くなります。
- 業務を棚卸しする
対象の業務を工程ごとに書き出し、それぞれにかかる時間を記録します。転記、照合、定型文の作成など、繰り返し発生する作業が見えてきます。 - AIに任せる部分と人が判断する部分を分ける
定型作業はAIや自動化に任せ、人は例外対応と判断だけを見る形にします。このとき、台帳や数字の定義がばらばらなままだとAIの出力も信用できないため、先にそろえます。 - その日から使える成果物を完成させる
自動化タスク、業務ごとのAIの指示書、テンプレートなど、実務で動くものを作ります。成果物があれば、他の社員もそのまま使え、効果を社内に説明する材料にもなります。
この3ステップを社内だけで進めると、「棚卸しの表を作って終わる」ことが少なくありません。研修で取り組む場合は、演習の題材を自社の業務に置き換え、毎回の研修で成果物を完成させる設計にすると、研修後にそのまま業務で使える状態になります。
生成AI活用のお役立ち資料をダウンロードする導入事例全6回の研修で自動化タスク5本、
作業時間は1件10分→5分に
3つの事業を営む企業では、受講者が「生成AIを活用した業務プロセス改革(BPR)研修」を全6回で受講し、自動化タスク5本を自作するところまで到達しました。毎回、自社の実業務を題材に成果物を完成させたことで、研修の途中から受講者自身が仕組みを作り始めています。
| 企業 | 3事業を営む小規模企業 |
|---|---|
| 受講者 | 総務・全体統括/企画・広告運用/営業。 生成AIの有料版は契約していたが、使いこなせていない状態からのスタート |
| 期間・時間 | 2026年実施、全6回・計12時間、オンライン |
| 内容 | 第1・2回:生成AIの活用/第3〜6回:業務の棚卸しと改善案の作成・実装 |
| 使用ツール | ChatGPT、Canva、Googleドライブ、NotebookLM、会計ソフトなど |
「型は共通、題材は各自の事業」で進める
受講者はそれぞれ別の事業を担当していたため、研修は「進め方の型は共通、題材は各自の事業」で設計しました。ご担当者からは「業務マップを作って終わりにせず、毎回実際に使えるものを完成させたい」というご要望をいただいていました。そこで演習には受講者自身が持ち込んだ広告データや売上データを使い、教材の架空の題材は使いませんでした。
研修で完成した主な成果物
- 自動化タスク5本
問い合わせ・予約台帳の更新、広告の週次分析、会計ソフトとの照合、週次レポート、月次の売上まとめ。第1回の宿題をきっかけに、受講者が自分で作成しました - SNS投稿作成の手順をAIに記憶させた「スキル」
企画から本文作成、画像化、保存までを一連で実行します。1名が作ったものを、別の受講者が自分の事業版として自主的に作り直しています - 商談の採点の仕組み
100点満点のスコアリングシートとChatGPTを組み合わせたもの - 商品管理シートの再構成
実際の案件で検証し、1件あたりの作業時間が10分から5分になりました
それぞれの担当業務を棚卸しして作った改善案を合わせると、月約42時間分の作業削減を見込んでいます(試行前の試算)。改善案はいずれも、「台帳を一本化する→定型作業を自動化する→人は例外と判断だけ見る」という同じ型で作成しています。
AIに任せる前に、人が数字の定義をそろえる
研修中、受講者が持ち込んだSNS広告のデータをAIで分析したところ、広告管理画面の「結果」が施策ごとに違う単位で数えられていることが分かりました。数千件に見えていた成果のうち、実際の成果は1件でした。
ここから、媒体ごとに意味が違う指標をそろえる「数字の定義書」を作りました。AIは渡された数字をそのまま集計するため、定義がそろっていないと、もっともらしい間違った結論を出します。何をAIに任せ、何を人が決めるかまで扱うことも、業務に定着させるための研修には欠かせません。
AI研修で取り組むときに確認したい3つのポイント
壁打ち止まりを解消する目的でAI研修を選ぶなら、「演習の題材を自社の業務に置き換えられるか」「毎回成果物が残るか」「研修後に受講者が自分で作れるか」の3点を確認してください。ツールの操作を網羅する研修では、この3点が満たせないことが多いためです。
- 演習の題材を自社の業務・データに置き換えられるか
受講者が日々扱う資料や台帳を使えると、「自分の業務にどう当てはめるか」という壁が最初からなくなります。 - 毎回、成果物が残る設計か
研修のたびに自動化タスクやAIの指示書が完成していれば、研修の効果を社内に示せます。 - 研修後に自走できるか
受講者が研修の外でも仕組みを作れるところまで到達すると、他の業務や他の社員に広げられます。
この進め方が合わないケース
業務を題材に成果物を作る研修は、生成AIに一度も触れたことがない社員が多い段階や、全社員の利用ルールが決まっていない段階には向きません。その場合は、基礎的な使い方とリスクを学ぶ生成AI研修や、社内ルールを作るAIガバナンス研修を先に実施するほうが、業務への展開がスムーズになります。
インターネット・アカデミーの業務プロセス改革(BPR)研修
インターネット・アカデミーの業務プロセス改革(BPR)研修は、AIを入口に業務プロセスそのものを見直す研修です。カスタマイズ型の研修では、事前に業務内容を伺い、演習の題材を貴社の業務に合わせて設計します。生成AIの活用研修と組み合わせれば、導入事例のように「使い方を学ぶ→業務を棚卸しする→成果物を作る」までを一つの研修で進められます。
よくある質問
業務を題材にしたAI研修は少人数でも実施でき、部署単位や数名のチームでの実施にも対応しています。受講者3名で実施した例もあります。受講者が少ないほど1人あたりの費用は高くなるため、費用を抑えたい場合は5名以上、できれば10名程度での実施をおすすめしています。
担当業務が違う社員が同じ研修を受ける場合は、「進め方の型は共通、題材は各自の業務」で設計すると効果が出ます。業務の棚卸しや自動化の考え方は共通で学び、演習では一人ひとりが自分の業務の成果物を作ります。
インターネット・アカデミーの生成AI研修は、ChatGPT・Gemini・Claude・Microsoft 365 Copilotに対応しています。社内で導入済みのツールを前提に、演習内容を設計できます。
生成AI活用のお役立ち資料をダウンロードするまとめ
- 生成AIが壁打ち・メール作成で止まるのは、業務とAIをつなぐ工程がないことが原因です
- 抜け出すには、業務を1つ選び、「棚卸し」「AIと人の役割分担」「成果物の完成」を順に進めます
- 研修で取り組むなら、演習の題材を自社の業務に置き換え、毎回成果物が残る設計を選びます
- 導入事例では、全6回の研修で自動化タスク5本を自作し、商品管理の作業が1件10分から5分になりました
インターネット・アカデミーは、1,200社以上のAI・DX人材育成の実績をもとに、貴社の業務を題材にした研修をご提案します。
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この記事の執筆者

インターネット・アカデミー リスキリングサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・AI研修・エンジニア研修などの法人向け研修サービスの提供を行っている教育機関です。1200社以上の企業のIT人材を育成したきた実績と、1995年から培ってきたIT教育ノウハウを元に、人事担当者、研修担当者、DX・AI推進担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者

インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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