人材育成大企業の現場に生成AIが浸透しない理由~製造業の部門別改善事例に学ぶ~

2026/07/14
大企業の現場に生成AIが浸透しない理由、製造業の部門別改善事例に学ぶ

生成AIの活用推進を担当されている方から「全社員が使えるようAIを導入したが、実際に使っているのはごく一部の社員だけ」というご相談が増えています。

この「導入後に実務で使われない」という悩みは、中小企業よりもむしろ大企業で深刻になりやすい構造があります。この記事では、大企業で生成AIが実務に使われない理由を、実際にインターネット・アカデミーへご相談いただいた企業の状況から整理。また、インターネット・アカデミーのAI研修を導入いただいた大手製造業でAI活用が成功した事例をご紹介します。

なお、企業規模を問わない定着の基本対策については、「生成AIを全社導入したのに使われない」定着しない理由と5つの対策の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

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大企業の生成AI活用は、導入と実務活用の間に溝がある

従業員1,000名以上の大企業の社員416名を対象に実施した調査では、勤務先で生成AIを「大半が活用できている」「ほぼ全ての人が活用できている」と答えた割合は合わせて1割程度にとどまり、約8割が自社の生成AI活用に課題を感じていると回答しています(出典:大企業における生成AIの活用実態調査 テックタッチ株式会社)。

大企業は中小企業に比べてツール導入やライセンス整備は早い傾向があります。それでも実務活用が進まないのは、社員のやる気の問題ではなく、大企業ならではの構造的な要因があるためです。

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大企業で生成AIが実務に使われない4つの構造要因

当社にご相談いただく大企業の状況を整理すると、要因は大きく4つに分けられます。

要因1環境整備が先行し、"業務への落とし込み"が手薄になる

ある非鉄金属加工の製造業(従業員約900名)では、全社員がGoogle Workspaceのアカウントを持ち、GeminiやNotebookLMをいつでも使える環境を整えていました。また、現場に浸透させるため推進部署が主導してGeminiの機能紹介やデモも実施していましたが、実際の利用者は、もともとアンテナの高い一部の社員に限られたままでした。

機能紹介では「何ができるか」は伝えられますが、「自分の今日の業務のどこで使うか」までは伝わりません。大企業では環境整備・セキュリティ・ライセンス管理は情報システム部門の仕事として明確ですが、「各部門の業務に落とし込む」という工程は誰の責任範囲でもないまま宙に浮きがちで、これがボトルネックになります。

要因2部門ごとの業務が違いすぎて、汎用研修が刺さらない

従業員が数百名〜数千名の規模になると、経理・法務・製造・研究開発・営業と、部門ごとの業務内容はまったくの別物です。ある情報通信業の企業(従業員約560名)では、M365 CopilotやGitHub Copilot、NotebookLM、Geminiと複数のツールを導入済みで「基本操作ができる社員は多いのに応用的な使い方ができない」という状態で止まっていました。

たとえば「議事録の要約」「メールの下書き」などはAI研修で汎用的なユースケースとして紹介されることが多いですが、技術部門や製造現場の社員は「自分の業務には関係ない」と判断してしまいます。全社一律の入門研修では、部門間の業務の差異を吸収しきれないことがほとんどです。

要因3使う人と使わない人が二極化する

ある小売業の大手企業(従業員約1,300名)では、別部門が先行してAI教育を実施し、その成果発表を見た経営層が他部署への展開を決めました。しかし現場では、AIを使う社員と使わない社員の二極化が進み、活用は個人作業の範囲にとどまっていました。組織の業務プロセスにAIを組み込んだ仕組みがないため、使える社員の生産性だけが上がり、その人にしかできない業務が増えていくという二極化が進んでいました。

要因4推進部門のリソース不足で本格導入が進まない

ある素材メーカー(従業員700名)では、一部社員がNotebookLMなどを試験的に使い始めていたものの、現場単位の利用にとどまり、ガイドラインやセキュリティ体制も未整備でした。担当者が最も懸念していたのは「利用シーンが確立されないまま全社導入しても、持ち腐れになるのではないか」という点です。

大企業では対象人数が多いぶん、研修の企画・案内・受講管理・効果測定といった事務局業務だけでも推進部門のリソースを圧迫します。数名の推進担当が数百名〜千名超の定着を内製で支えるのは、構造的に無理があります。

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大手製造業の部門別改善事例

大手製造業の部門別改善事例

それでは「実務に使われている状態」とは具体的にどのようなものでしょうか。インターネット・アカデミーのIT研修を導入いただいた、ある大手製造業の事例をご紹介します。

この企業では、AI研修に加え、データ分析ツールや業務プロセス改革(BPR)も学習したうえで、受講者がそれぞれの部門の業務課題を解決する施策を実施し、その結果を社内プレゼンで共有するところまでを一連のプログラムとして行いました。ポイントは、研修のゴールを「ツールの使い方を覚えること」ではなく「自部門の業務を実際に改善すること」に置いた点です。

その結果、多くの部門で成果が生まれていました。ここでは一例として3部門の成果を紹介します。

製造部門手作業の進捗集計を自動化し、月30時間を削減

製造部門では、製造工程の進捗をレポートする際に、担当者がデータを手動で収集・計算し、メールで関係者に配信しており、トータルで月30時間はこのレポート業務に費やしていました。研修後は、データの抽出・整形からダッシュボード出力までを自動化。作業時間を月30時間削減し、「あの人しか集計できない」という属人化と作業ミスも同時に解消しました。

経営企画部門月次レポート作成の担当者が不要になった

P/L集計は、各部門から提出されるExcelの更新確認・不備の修正依頼・手入力での転記を繰り返す、負荷の大きい業務でした。研修後はファイルの更新依頼から取得・集計・出力までを自動化し、月次レポート作成の専任担当を置く必要がなくなりました。月15万円相当の工数が削減でき、担当者はより付加価値の高い業務に移行しています。

設備管理部門1回5分の確認作業が1分に

社内データベースに分散していた設備系データをAIで集約・可視化し、1回5分かかっていた確認作業を1分に短縮しました。1回あたりの削減は数分でも、毎日繰り返される作業だからこそ、現場の体感としては大きな変化になります。

なぜ部門ごとに成果が出たのか

この事例で注目すべきは、製造・経営企画・設備管理と、業務内容がまったく異なる部門のそれぞれで成果が出ている点です。理由はシンプルで、研修の起点が「ツール」ではなく「各部門の業務課題の棚卸し」だったからです。受講者が自分の業務の困りごとを持ち込み、それを解決する形で学ぶため、「自分の業務には関係ない」という空振りが起きません。

さらに、成果を社内プレゼンで共有したことで「他部門の発表を聞いて、自部署にも応用できると気づいた」という声もあがり、部門を越えて活用ノウハウが循環し、できる人のやり方が組織の共有財産になっていました。

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大企業でAIを実務に定着させる3つの設計原則

ご相談事例と改善事例を踏まえると、大企業での定着には次の3つの設計が必要です。

  • 業務起点で設計する「AIで何ができるか」ではなく「この部門のこの業務のどこを変えるか」から始めます。研修前に業務の棚卸しを行い、受講者が自分の実務課題を持ち込める形式にすると良いでしょう。
  • 全社一律ではなく、部門・レベル別に分ける初めて触る層への基礎リテラシーと、すでに使っている層への実践・自動化スキルは別プログラムにする、部署によって演習の内容を切り分けるなどが有効です。
  • 学習から実務活用までスコープに含める研修を受講しただけでは、その後の業務活用が進みにくくなります。実務活用や、その後の成果発表まで研修プロジェクトのスコープに含めることで実務活用をゴールとした学習が進みます。

この3つは、いずれも推進部門が片手間の内製で回すには負荷の大きい設計です。だからこそ、業務起点の研修設計と定着支援を外部パートナーに任せ、推進部門は社内の意思決定と調整に集中する分担が、大企業では現実的な選択肢になります。

インターネット・アカデミーでは、1,200社以上のAI・DX人材育成実績をもとに、業務の棚卸しから改善の実装・社内共有までを含む実務直結型の研修を、部門・レベル別に設計してご提案します。

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