人材育成生成AI研修が定着しない原因と、研修後に追うべきKPI。AI研修の相談傾向から見えた「導入済み・未定着」の壁
2026/09/29
生成AIの研修を実施し、全社でツールも使える状態にしたものの、
- 数か月たっても使っているのは一部の社員だけ
- 議事録の要約やメールの添削以外に用途が広がらない
- 経営層から成果報告を求められても、答えられる数字がない
生成AIの導入を担当するDX推進部門・情報システム部門・人事部門の方から、こうしたご相談が増えています。
この記事では、インターネット・アカデミーに寄せられたAI活用に関するご相談の傾向をもとに、生成AI研修が定着しない原因を整理します。そのうえで、研修前後にどのような設計をすればよいか、そして定着したかどうかを何で測るかを解説します。
「ツールは導入済み、でも定着していない」企業は約3割
インターネット・アカデミーに寄せられたAI活用・AI研修に関するご相談を、AI活用の段階別に整理しました。
| AI活用の段階 | 構成比 |
|---|---|
| 全社導入済みだが定着していない | 約34% |
| 個人利用のみ(会社として未導入) | 約32% |
| 一部の部門・層に導入済み | 約8% |
| 段階不明 | 約26% |
最も多かったのは「全社導入済みだが定着していない」段階でした。ツールの導入はゴールではなく、むしろ本当の課題の始まりであることがわかります。
この段階の企業が挙げた課題を見ると、最も多いのが「社員間のリテラシー格差・二極化」(約4割)で、次いで「何に使えばよいか分からない」(約3割)でした。どちらも、ツールの操作方法を教えるだけでは解決しない課題です。
生成AI研修のお役立ち資料をダウンロードする生成AI研修が定着しない3つの原因
原因1自分の業務にどう当てはめればよいか分からない
研修で生成AIの基本操作を学んでも、受講者が「自分の仕事のどこで使えるか」を具体的に描けなければ、翌日から元のやり方に戻ります。
数百名規模のある卸売業からは、「自分の業務にAIをどう当てはめればよいか想像できない社員が多く、議事録作成やメール添削以外の用途で活用が進んでいない」というご相談をいただきました。別の卸売業(約100〜300名規模)では、基礎研修は完了したものの、各部門の業務特性に合わせた活用方法が浸透していないという状態でした。
全社共通の汎用的な例題だけでは、営業・経理・製造現場といった職種ごとの使いどころは見えてきません。
原因2誰がどこまで使えているのかが見えていない
二極化が進んでいても、それが数字として把握されていなければ、手の打ちようがありません。
ある小規模な卸売業からは「誰がどの程度AIを使いこなせているのか可視化が難しい」、ある小売業(数百名規模)からは「社員のAI活用状況が把握できていない」というご相談をいただいています。
状況が見えないまま全社一律で追加研修を実施しても、すでに使えている層には物足りず、使えていない層には届かない、という結果になりがちです。
原因3推進役と相談先がいない
研修後に疑問が生じても、気軽に聞ける相手がいなければ、多くの社員は試すこと自体をやめてしまいます。
あるサービス業(約100〜300名規模)では、社内の利用ガイドラインを整備したものの社員に浸透せず、推進担当者だけでは全社員に説明する余裕もないという状況でした。推進を一部の担当者に任せたままでは、定着は進みません。現場の各部署に相談を受けられる人を置くことが必要です。
研修前・研修中・研修後の3段階で設計する
定着させるには、研修を1日で終わるイベントではなく、前後を含めたプロセスとして設計することが重要です。
研修前業務の棚卸しと測定の準備
各部署で時間がかかっている業務や、繰り返し発生する作業をヒアリングし、研修で扱う題材を決めます。この段階で、後述するKPIの測定対象となる業務と、その業務に現在どれくらい時間がかかっているか(ベースライン)も押さえておきます。研修後に効果を測れない企業の多くは、この研修前の数字を取っていません。
研修中自分の業務で手を動かす
受講者が自分の業務を題材に、実際に生成AIを操作する時間を確保します。研修の最後に「明日から何に使うか」を一人ひとつ決めてもらうと、行動につながりやすくなります。
研修後推進役・共有の場・定期的な振り返り
部署ごとに推進役を1名置き、相談の窓口と成功事例を発信する役割を担ってもらいます。有用なプロンプトや手順は、他の人が読んでも再現できる形で共有フォルダにためていくと、活用が特定の人に偏るのを防げます。そのうえで、次に説明するKPIを定期的に振り返ります。
定着したかどうかを測るKPIの設計
「研修を実施した」「満足度が高かった」だけでは、定着したかどうかは分かりません。KPIは、行動・業務・経営の3つの層に分けて設計すると整理しやすくなります。
| 層 | 指標の例 | 定義・測り方 | 確認の頻度 |
|---|---|---|---|
| 行動 | 週次利用率 | 受講者のうち、その週に1回以上業務で生成AIを使った人の割合 | 毎週〜隔週 |
| 行動 | 定番業務の数 | 部署内で「この業務にはAIを使う」と決まっている業務の数 | 毎月 |
| 業務 | 対象業務の所要時間 | 研修前に決めた対象業務1件あたりの作業時間(研修前後で比較) | 毎月 |
| 業務 | 手戻り・修正の回数 | AIで作った下書きの修正回数や差し戻しの件数 | 毎月 |
| 経営 | 削減時間の試算 | 業務ごとの削減時間 × 月間件数 × 対象人数 | 四半期 |
行動指標を最初に追う
研修直後から業務の数字がすぐに動くことはまれです。最初の1〜2か月は、「使っているか」「使う業務が決まっているか」という行動指標で定着の兆しを確認します。週次利用率が下がり始めた部署は、推進役によるフォローを優先的に入れる対象になります。
あわせて、「使おうとしたが使わなかった業務」とその理由(社内ルール上入力できないデータだった、手順が分からなかった、など)も記録しておくと、次の研修内容やガイドラインを見直す材料になります。
利用ログが取れない場合の測り方
法人契約のツールであれば管理画面で利用状況を確認できる場合がありますが、個人アカウントでの利用が混在していると、ログだけでは実態をつかめません。その場合は、月に1回、次の3問程度の簡単なアンケートで代わりに測る方法があります。
- 先月、業務で生成AIを使った頻度(週1回以上/月数回/使っていない)
- 最もよく使った業務はどれか
- その業務で1回あたり何分くらい短縮できたか(概算)
自己申告の数字は精度に限界がありますが、同じ質問を続けることで推移を追うことはできます。
経営層への報告は1枚にまとめる
経営層への報告では、細かい数字をすべて並べる必要はありません。週次利用率の推移、部署ごとの定番業務の一覧、削減時間の試算、次に対象とする業務の4点を1枚にまとめると、研修への投資を続けるかどうかの判断材料として伝わりやすくなります。
研修だけで足りない場合は「伴走型」の支援も検討する
研修で基礎を身につけても、業務への当てはめや推進体制づくりまでを社内だけで進めるのは簡単ではありません。特に、推進担当者が本来の業務と兼任している場合は、研修後の運用が後回しになりがちです。
インターネット・アカデミーの生成AI研修では、受講者自身の業務を題材にした演習を行い、研修後もオフィスアワーやフォローアップトレーニングを通じて、現場で出てきた疑問に講師が対応します。AI活用系の研修の導入事例では、製造部門で進捗報告の自動化によって月40時間の工数を削減した例もあります。
研修だけでなく、現場での活用から業務の見直し、組織への定着までを一貫して支援してほしい場合は、AX推進 伴走支援が適しています。
生成AI研修のお役立ち資料をダウンロードするよくある質問
一律の基準はなく、自社の目的に合わせて決める必要があります。まずは「受講者の週次利用率」と「部署ごとの定番業務が1つ以上あるか」の2点を研修前に目標として決めておき、研修後に振り返る方法をおすすめします。
最初に、誰がどの業務でどれくらい使っているかを把握することから始めます。利用状況が見えれば、全員に同じ追加研修を行うのではなく、使えていない層や業務に絞ったフォローが可能になります。
生成AI研修のお役立ち資料をダウンロードするまとめ
- 当社へのご相談の約3割が「全社導入済みだが定着していない」段階で、主な課題はリテラシー格差と「何に使えばよいか分からない」の2つでした
- 定着しない主な原因は、業務に当てはめられないこと、利用状況が見えていないこと、推進役と相談先がいないことの3つです
- 研修の前に業務の棚卸しとベースラインの測定を行い、研修中は自分の業務で手を動かし、研修後は推進役と共有の場を置きます
- KPIは行動・業務・経営の3層で設計し、最初の1〜2か月は行動指標から追います
インターネット・アカデミーは1,200社のIT研修実績をもとに、生成AI研修の設計から研修後の定着まで、貴社の状況に合わせてご提案します。
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この記事の執筆者

インターネット・アカデミー ITビジネスサプリ編集部
インターネット・アカデミー リスキリングサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・AI研修・エンジニア研修などの法人向け研修サービスの提供を行っている教育機関です。1200社以上の企業のIT人材を育成したきた実績と、1995年から培ってきたIT教育ノウハウを元に、人事担当者、研修担当者、DX・AI推進担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者

インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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