AIを使いこなす社員の育成法
2つの必須スキルと2つのSTEP
執筆者:インターネット・アカデミー株式会社
主席コンサルタント 稲葉光

本記事は、経営層・人事担当者向け専門情報誌「月刊人事マネジメント」6月号に掲載された寄稿記事です。
AI活用の現状と課題
AIはあくまでツールです。導入自体が目的ではなく、経営課題を解決する手段の1つに過ぎません。しかしAIはあらゆる業務プロセスに付随するため、ITの普及によりPCスキルやインターネットがビジネスの前提となったように、AIの習熟が事業を推進するうえで必須となっています。ホワイトカラーにとってAIを活用しない選択は、数年後の業務遂行に支障をきたすリスクをはらんでいます。
一方で、AIによる抜本的な事業変革、AX(AIトランスフォーメーション)を検討する企業は、現時点では限定的です。その要因は、AI自体の技術水準が既存の業務代替や事業再編を実現できる域にまで達していない点にあります。将来的なホワイトカラー業務の自動化は現実的な予測ですが、具体的な技術が確立されていない現段階で、実行力のある事業計画の策定は困難です。概念としての将来像は描けても、実装するための「技術的裏付け」が不足している状況といえます。
ビジネスにおけるAIの有用性が認識されている一方で、活用の精度は個人の資質に委ねられているのが実情です。その結果、利用層と非利用層の間でAIの知見への格差が広がっています。組織全体の生産性を底上げするため、習熟すべき水準を設定しておく必要があります。
AI人材育成のお役立ち資料をダウンロードするAI活用に必須な2つの能力
AIを活用するには、前提として「機能を使えるようになること」が求められます。プロンプトに対する出力の限界への理解、回答を鵜呑みにせず、入力を工夫して回答の精度を高めるスキルなどが含まれます。汎用的なAIに加え、業界特化型のツールに関する知見も必要です。これらの知識は学習に時間を投じれば、企業規模や役職を問わず誰でも習得できます。まずはAIに関する知識を身につけることが重要です。
そしてAIを使いこなすために不可欠な能力が、現状から解決すべき課題を特定し、問いを立てる「課題に対する作問能力」です。AIに解を導かせるための前提となる問いは、人間が用意しなければなりません。つまり、AI活用の核心は、インプットに至るまでのプロセスを構築する力といっていいでしょう。
ツールの習熟と並行して、課題を可視化するため「思考のフレームワーク」まで習得することが実務に即したAI教育といえます。仮説思考、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、アイデアソン、業務プロセスを再構築するBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)などの手法と組み合わせて初めてAIは有効に機能します。
インターネット・アカデミーが実施している研修は、各社の実課題に即したテーマを設定して、受講者自らが課題を定義し、解決の道筋を作成する構成です。実際の課題の特定からAIへの入力までを一貫して行うことで、研修後の活用の具体性が担保されます。研修の過程で業務自動化のプログラム構築や、最適化された業務フローの策定まで完成させることも可能です。
AI人材育成のお役立ち資料をダウンロードする指示する力量と責任をとる覚悟
2025年、AIエージェントが急速に普及しました。従来のAIやデジタルツールも、AIエージェントも、本質的には業務の手段ですが、運用手法が明確に異なります。従来のツールは常に人間の操作が必要ですが、自律的に動くAIエージェントは、人間の操作ではなく詳細な業務指示書が必要になります。部下に対するマネジメントと同様で、目標を設定し、達成に向けたKPIやプロセスを初期段階で定義しなければなりません。そして、進捗を適宜評価・管理するプロセスを通じて業務を進めていきます。
結果に責任を取るのは人間です。部下がAIを活用した結果生じる過失も、管理職が負わなければなりません。AIへの理解が未熟な部下が、不正確な情報を含むハルシネーションが混在した資料を提出するケースもあるため、管理職のチェックコストが増大するという事態も散見されます。しかし今は管理職の負担と責任が増している状況ですが、技術の進化と従業員の習熟が進めば、成果物の品質は標準化されていくと予測されます。
AI人材育成のお役立ち資料をダウンロードする2ステップによるAI人材育成

人材育成における課題の1つが、ベテラン層のリスキリングです。かつては経験で職責を全うすることが可能でしたが、業務でAIを活用する現代では、その前提が崩れつつあります。AIの活用によって生産性が飛躍的に向上する時代に、AIの活用を回避し続ける層のアウトプットは相対的に評価が下がります。従来の知見のみで乗り切ろうとする層に対して、変化を前向きに捉え、自己変革を促すような意識改革の場が必要です。
ベテラン層の強みは、長年の経験に裏打ちされた人間力やコミュニケーション力でしょう。AIの普及によりAIに頼る人たちが増えるほど、これらビジネスに不可欠な力の希少価値は高まります。ITスキルの不足により評価を落としていた人だからこそ、AIを身につけることで、若手層を逆転する可能性はあります。
若手層については多くの企業がすでに認識しているように、AIを使うのが当たり前な世代である一方で、社会人経験の浅さからビジネスにおけるコミュニケーション能力が発展途上という傾向が見られます。結論として、全世代において先端技術の習熟とビジネスの総合力の両方を兼ね備えることが、今後の人材において不可欠な要件といえます。
対人能力に長けたベテラン層のリスキリングは極めて有効な組織戦略となります。高いコミュニケーション力を備えた層にAIという新たなスキルを身につけさせることで、即戦力としての再活性化が期待できるからです。この層に向けたAIの教育プログラムの構築は、多くの企業が見落としている強化策です。既存のリソースを最大限に活用した組織力を底上げする好機といえるでしょう。
AI人材を効率的に育成するには体系的な研修が有効です。AI技術の革新速度を考慮すれば、最新動向をキャッチしている教育専門機関との連携が望ましく、体系的な知識に加えて今後のAIの進化の流れも把握したインプットが可能です。
最後に、AI人材育成の方法として、2ステップによる段階的なアプローチを紹介します。
全従業員を対象に、AI活用の基礎をインプットします。社内に適任者がいれば、社内講師を起用した教育の内製化も選択肢となります。
AIを実務に組み込む段階で、課題発見や解決も含めた研修です。各部署に「業務上の課題に対し、AIを用いて解決策を提示できる人材」を配置することが最終的な目標です。
これらの教育を通して土台が確立して初めて、AIを前提とした次段階の事業戦略を議論する準備が整います。
AI人材育成のお役立ち資料をダウンロードするまとめ
AIを使いこなす社員を育てるうえでの要点を整理します。
- AIの習熟はホワイトカラーにとって必須のスキルとなりつつあり、活用しない選択は将来的な業務遂行のリスクになる
- AI活用には「機能を使える力」と「課題に対して問いを立てる力(作問能力)」の2つが必要
- AIエージェント時代には、人間が業務指示を設計し、結果に責任を持つマネジメント力が問われる
- 人材育成は「全社的なAIリテラシー底上げ(ステップ1)」と「実務直結型の応用展開(ステップ2)」の2段階で進める
インターネット・アカデミーでは、全社のリテラシー底上げから実務直結型の応用まで、段階に応じたAI研修を提供しています。AIを使いこなす人材の育成についてお悩みがあれば、1,200社以上のAI・DX人材育成実績をもとに、貴社に合った進め方をご提案します。お気軽にご相談ください。
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稲葉光
インターネット・アカデミー ITコンサルタント 室長
インストラクター、カリキュラム開発、マーケティングなどの専門部署を経て身につけた幅広いITの知見を強みとするITコンサルタントで、400社を超える企業のデジタル人材育成を支援。
主な講演実績:神奈川工科大学、エコーネットコンソーシアムフォーラム
主な認定資格:認定資格:Python、Java、PHP、W3C dev、Adobe認定エキスパート、Google広告認定資格 ※他多数
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