人材育成AIで新人エンジニアのOJT負担が増えている?研修で前倒ししておくべき3つの基礎力
2026/10/06
- 新人エンジニアが生成AIで書いたコードを、OJT担当者が1行ずつ確認し直している。
- エラーが出ると、新人はエラー文を読まずにAIへ同じ質問を繰り返す。
- 「なぜこう書いたの?」と聞くと、「AIがそう出したので」と返ってくる。
生成AIを新人が使用するようになり、こうした光景は多くの開発現場で見られるようになりました。新人の作業スピードは上がったはずなのに、指導する側の負担はかえって重くなっていると感じている開発部門長や人事担当者は少なくないはずです。
新人のAI利用でOJT負担が増える原因は、新人にAIの出力が正しいかを判断するための基礎力が備わっていないためです。必要な基礎力は「コードを読んで説明できる力」「要件を読み解いて言葉にできる力」「エラーを読んで自力で原因を特定できる力」の3つで、いずれも配属前の研修で身につけさせることができます。
新人のAI利用で、OJT負担はどれだけ増えているのか
新人エンジニアを指導する担当者の約8割が、生成AIの普及によって指導やコードレビューの時間が増えたと答えています。新人のAI利用はすでに当たり前になっており、その分の確認作業が指導する側に集まっています。
株式会社ジョブサポートが2026年3月に実施した調査(入社1〜3年目のエンジニアのOJT担当経験者1,004人が対象)では、担当する新人・若手が業務で生成AIを「積極的に活用している」が40.0%、「必要に応じて利用している」が50.0%でした。9割の新人が、日常的に生成AIを使っていることになります。
同じ調査で、指導やコードレビューにかかる時間が「大幅に増加した」は26.1%、「やや増加した」は51.8%でした。合わせて約8割の現場で、OJTの負担が重くなっています。
負担は、担当者個人の工夫で吸収できる範囲を超えつつあります。同社が2026年4月に実施した別の調査(対象1,004人)では、通常業務と並行して育成を担う今のOJT体制に「限界を感じている」と答えた人が72.8%に上りました。育成の負担を理由に、約7割が転職や異動を意識したことがあるとも答えています。
新人の育成負担が、教える側の指導担当者の離職リスクにまでつながり始めているということです。
新人エンジニア研修のお役立ち資料をダウンロードOJT負担が増える原因は
「AIの出力を判断できないこと」
OJT負担を増やしているのは、新人がAIを使うこと自体ではありません。AIが出したコードの正しさを判断できないまま使っていることが、指導する側の確認作業を増やしています。
ジョブサポートの2026年3月の調査では、生成AIを使っている新人を指導する回答者に、AIで作ったコードの課題を尋ねています。最も多かったのは「出力されたコードの仕組みや根拠を本人が理解していない」で61.4%でした。続いて「要件を読み解けず、曖昧な指示(プロンプト)を出している」が47.5%、「エラーの原因を自力で特定・修正できない」が36.6%です。
負担が減らない理由としては、「エラー解決を粘り強く行う当事者意識・自走力がない」が52.3%、「正誤を判断する体系的な基礎知識がない」が48.9%、「適切な指示を出す言語化能力・読解力が不足している」が30.5%と続きます。
コードレビューの現場も同じ状況です。キッカケクリエイションがコードレビュー担当のエンジニア322人に行った調査では、AIが生成したコードをレビューした経験のある人の約9割が、負担が増えたと感じていました。レビューで問題だと感じた点の最多は、「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」(49.5%)です。
これらの課題を整理すると、OJT担当者の負担は次の3つの基礎力の不足に行き着きます。
| 現場で起きていること | 不足している基礎力 |
|---|---|
| AIが書いたコードの仕組みを理解していない(61.4%)、レビューで説明できない(49.5%) | ①コードを読んで説明できる力 |
| 要件を読み解けず、AIに曖昧な指示を出している(47.5%) | ②要件を読み解いて言葉にできる力 |
| エラーの原因を自力で特定できない(36.6%) | ③エラーを読んで自力で原因を特定できる力 |
いずれも、AIが登場する前からエンジニアに求められてきた力です。AIが代わりにコードを書いてくれるようになった分、この3つを鍛える機会が減り、その不足が配属後に表に出ています。
新人エンジニア研修のお役立ち資料をダウンロード基礎力①:コードを読んで説明できる力
コードを読んで説明できる力とは、AIが書いたコードであっても「なぜこの処理でよいのか」を自分の言葉で説明できる力です。この力があれば、OJT担当者はコードの読み解きから導く必要がなくなり、レビューの負担が最も直接的に下がります。
説明できない新人のコードは、動いていても安心して任せられません。指導する側は、新人がどこまで理解しているのかを確かめるところから始めることになります。レビューで「提出者本人が説明できない」ことが最多の問題に挙がるのは、そのためです。
研修での鍛え方
コードを説明する力は、「自分が書いたコードを他人に説明する場面」を研修の中にどれだけ組み込めるかで伸び方が変わります。具体的には次のような場面です。
- チーム開発演習で、メンバーが書いたコードを統合する
- 成果物を発表し、設計や実装の意図を説明する
- 同期に教える役割を担う
インターネット・アカデミーで新卒社員65名に研修を実施した株式会社ドリームキャリアでは、研修の最後にグループごとの成果物を作って発表しました。受講生からは、全員のプログラムを統合する作業で変数やメソッド名のすり合わせや予期しないエラーの修正を何度も繰り返し、全員で間違いを探して直したという声が寄せられています。他人のコードを読み、自分のコードを説明する経験を、配属前に積んでいることになります。
新卒社員31人を受け入れた株式会社コアコンセプト・テクノロジーの研修でも、チーム演習の中で知識のある新卒社員がほかの社員に教えながら開発を進めました。人に教えるためには、自分が書いたコードを理解していなければなりません。
AIを使う演習でも、考え方は同じです。AIが出したコードをそのまま提出させるのではなく、「このコードが何をしているか」を説明させてから次に進むようにすると、AIを使いながらでも説明する力を鍛えられます。
基礎力②:要件を読み解いて言葉にできる力
要件を読み解いて言葉にできる力とは、「何を作ればよいのか」を自分で整理し、他人やAIに伝わる言葉で表せる力です。この力がない新人は、AIにも曖昧な指示しか出せず、ずれた出力の手戻りがOJT担当者に回ってきます。
ジョブサポートの2026年3月の調査では、新人が「要件を読み解けず、曖昧な指示(プロンプト)を出している」という回答が47.5%ありました。AIは、曖昧な指示にもそれらしいコードを返します。そのため、要件とずれていることに新人自身が気づかず、レビューの段階で初めて発覚します。
AIへの指示の質は、プロンプトのテクニックよりも、要件をどれだけ正確に理解しているかで決まります。要件を読み解く力は、AIを使いこなすための前提でもあります。
研修での鍛え方
要件を読み解く力は、発注者と開発者の両方の立場を体験する演習で鍛えられます。要件を「書く側」を経験すると、曖昧な要件が開発者をどれだけ困らせるかを実感できるからです。
インターネット・アカデミーが実施したリンク情報システム株式会社の新人研修では、全員が2人1組のペアを組み、あるペアに対しては発注者として仕様書を作り、別のペアに対しては開発者として仕様書に沿ったゲームを開発しました。開発者の立場では、発注者へ途中経過を報告し、より詳しい要望をヒアリングすることも求められます。仕様を「書く」「読む」「確かめる」を一通り経験する構成です。
株式会社コアコンセプト・テクノロジーも、採用でも育成でも「クライアントの課題を聞き取り、正しく理解すること」を重視しています。同社の研修では、相手の問題意識を理解し、論点を整理したうえでわかりやすく伝えるトレーニングを組み込んでいます。プログラミングの研修であっても、「聞き取る」「整理する」「伝える」を練習する場面があるかどうかが、この力の差になります。
基礎力③:エラーを読んで自力で原因を特定できる力
エラーを読んで自力で原因を特定できる力とは、エラー文から原因の仮説を立て、確かめながら絞り込んでいく力です。この力がない新人は、AIへの再質問か先輩への質問を繰り返し、そのたびにOJT担当者の時間を使うことになります。
ジョブサポートの2026年3月の調査では、AIが書いたコードでエラーが出たときの新人の反応として、「エラー文を自分で読まず、やみくもにAIに再質問を繰り返す」が46.5%で最多でした。「自分で原因を調べず、すぐに先輩に正解を求める」も40.5%あります。
現場が求めているのも、まさにこの力です。同社の2026年4月の調査では、配属前の研修で技術以外に身につけてほしいこととして、「わからないことを自ら調べて解決に導く問題解決能力(自走力)」が51.6%で最多でした。
研修での鍛え方
エラー解決の力は、研修中に「エラーに出会い、自分で解消する経験」を意図的に積ませることで伸びます。ポイントは、講師が答えを渡すのではなく、エラー文の読み方と原因の絞り込み方を一緒にたどることです。答えだけをもらった新人は、次のエラーでまた質問に来ます。
インターネット・アカデミーで研修を実施した株式会社システムインテグレータ(プログラミング未経験者を中心とした新入社員15人に約2か月の研修)では、受講生から「エラーの意味が分からないときも一緒に考えて解決してもらい、勉強になった」という声がありました。この研修の最後には、チームごとに要件定義から結合テストまでの開発工程を一通り経験する演習も行いました。テストで出た不具合を自分たちで直す経験は、配属前だからこそ安全に積めます。
AIを使わない演習が意味を持つのも、この力のためです。AIを使えば、エラーに出会う前に動くコードが手に入ってしまいます。自分の手で書いてエラーを出し、自分で直す時間をあえて取ることが、配属後にAIの出力を検証する力になります。
研修で済ませること、OJTに任せること
配属先に関係なく共通して必要な基礎力は配属前の研修で、配属先固有の技術や業務知識はOJTで身につけるように役割を分けると、OJT担当者は本来の技術指導に集中できます。コードの説明、要件の読み解き、エラーの解決という3つの基礎力は、どの部署に配属されても必要になるため、研修に寄せるべき側に入ります。
| 配属前の研修で済ませること | 配属後のOJTに任せること |
|---|---|
| コードを読んで説明する力 | 配属先のプロダクトやシステムの構造 |
| 要件を読み解いて言葉にする力 | 顧客や業界に固有の業務知識 |
| エラーを読んで原因を特定する力 | チームの開発ルールやコーディング規約 |
| 開発工程の全体像とチーム開発の進め方 | 実案件での判断や優先順位のつけ方 |
| 生成AIの基礎と、情報漏えいなどのリスク | 配属先で使うAIツールとその利用ルール |
| ビジネスマナーや報告・相談の基本 | 部署内の人間関係や進め方の慣習 |
株式会社マネーパートナーズソリューションズの研修事例では、新卒社員が3か月の研修でJavaに加えてビジネスでの考え方や仕事への向き合い方も学びました。その結果、その後のOJTでは一から説明しなくても新人が職場に適応できていたといいます。同社はもともと中途採用中心で、社員が通常業務から離れて教育を担う余裕がないことが課題でした。
株式会社システムインテグレータの研修事例でも、役割分担をはっきりさせています。全体研修で開発の基礎を学んだあと、各部署で自社プロダクトの研修を受け、その後にOJTとしてプロジェクトに加わる流れです。研修の内容も、自社で教えられることは自社で行い、それ以外を外部に依頼する形で設計されています。
新人エンジニア研修のお役立ち資料をダウンロード研修での前倒しが効きにくいケース
研修で基礎力を前倒ししても、受け入れる現場の体制がそのままだとOJT負担は下がりにくくなります。研修を外部に任せる前に、次の3点に当てはまらないかを確認しておくことをおすすめします。
配属先の技術が特殊で、汎用的な基礎では足りない
配属先で使う技術や業務が自社固有のものに偏っている場合、汎用的な基礎研修だけではOJTで教えることが減りません。その場合は、研修のカリキュラムに配属先で使う言語やフレームワークを組み込むか、OJTの前に自社プロダクトの研修を厚くする必要があります。
研修と現場で、AIの使い方のルールが食い違う
研修で「AIの出力は説明できるまで使わない」と教えても、配属先で何のルールもなく使える状態だと、新人はすぐに丸投げに戻ります。研修で教えるAIの使い方と、配属先での利用ルールやレビューの基準は、揃えておく必要があります。
OJT担当者が、研修での到達度を知らないまま受け入れる
研修で何ができるようになったのかをOJT担当者が知らなければ、結局、新人の理解度を一から確かめることになります。研修中の評価や講師の所見を、配属前に受け入れ側と共有する仕組みが必要です。
情報システム部に配属される新入社員19名に研修を実施したアットホーム株式会社では、講師が受講者全員の評価を中間報告と最終報告で点数化し、配属先の決定に活用しました。受講者が提出する日報に先輩社員がコメントできる体制もとり、研修中から新人と受け入れ側がやりとりできるようにしています。
インターネット・アカデミーの
新人エンジニア研修での取り組み
インターネット・アカデミーの新人エンジニア研修では、生成AIを「使わせない」のでも「任せきりにする」のでもなく、基礎力とAI活用の両方を身につける構成にしています。
- 研修の初期に、生成AIの基礎と、情報漏えいなどのセキュリティリスクを学びます。
- 開発演習では、AIを使わずに開発する演習と、AIを使って開発する演習の両方を行います。AIを使わない演習でコードを読む力とエラーを解決する力を鍛え、AIを使う演習でその力を活かした使い方を学びます。
- チーム開発演習や成果発表を通じて、自分のコードを説明し、要件を言葉にする経験を積みます。
研修の内容は、配属先で使う言語や技術に合わせて調整できます。研修中の受講状況を受け入れ側と共有した事例もあり、株式会社ドリームキャリアでは講師からの週報を通じて新人の成長度合いを随時把握できたという声をいただいています。
研修を導入した企業へのヒアリングでは、OJTにかかる教育負担が80%軽減したという声も寄せられています。
2027年度の新人エンジニア研修は4月開講です。他社の新人と一緒に学ぶオープン講座は3月下旬まで申込を受け付けています。自社向けにカリキュラムを設計する1社型の研修は、運営の準備期間が必要なため、遅くとも1月中のご相談をおすすめします(2026年10月時点)。
新人エンジニア研修のお役立ち資料をダウンロードよくある質問
新人エンジニアのOJT負担を減らすには、配属前の研修で「コードを読んで説明できる力」「要件を読み解いて言葉にできる力」「エラーを読んで自力で原因を特定できる力」の3つを身につけさせることが有効です。この3つは配属先に関係なく必要になるため、研修でまとめて教えると効率がよく、OJT担当者は配属先固有の技術や業務の指導に集中できます。
生成AIを使うと新人の作業は速くなりますが、出力の正しさを判断できなければ戦力にはなりません。ジョブサポートが2026年3月に実施した調査では、新人がAIで作ったコードの仕組みを理解していないという回答が61.4%に上り、指導担当者の約8割がOJTの負担が増えたと答えています。
新人研修での生成AIの全面禁止はおすすめしません。配属後の開発現場はAIを使う前提で動いているため、研修で一度も使わずに配属すると、現場で自己流の使い方が始まります。AIを使わずに基礎力を鍛える演習と、AIの出力を説明・検証しながら使う演習を両方行う方法が現実的です。
インターネット・アカデミーの2027年度新人エンジニア研修は4月開講で、オープン講座は3月下旬まで申込を受け付けています。自社向けにカリキュラムを設計する1社型の研修は、遅くとも1月中の相談が目安です(2026年10月時点)。
新人エンジニア研修のお役立ち資料をダウンロードまとめ
- 新人エンジニアの9割が日常的に生成AIを使い、指導担当者の約8割がOJTの負担が増えたと感じている(2026年3月の調査)
- 負担が増える原因はAIそのものではなく、AIの出力を判断するための基礎力の不足
- 必要な基礎力は「コードを読んで説明できる力」「要件を読み解いて言葉にできる力」「エラーを読んで自力で原因を特定できる力」の3つ
- 3つの基礎力は配属前の研修で、配属先固有の技術や業務はOJTで、と役割を分ける
- 研修と現場でAIの利用ルールを揃え、研修での到達度を受け入れ側と共有しないと、前倒しの効果は薄くなる
インターネット・アカデミーは、1,200社以上の研修実績をもとに、配属先の技術や新人のレベルに合わせた新人エンジニア研修をご提案します。生成AIの基礎とセキュリティ、AIを使わない演習とAIを使う演習の両方を通じて、配属後にAIを使いこなせる基礎力を身につけます。
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この記事の執筆者

インターネット・アカデミー リスキリングサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・AI研修・エンジニア研修などの法人向け研修サービスの提供を行っている教育機関です。1200社以上の企業のIT人材を育成したきた実績と、1995年から培ってきたIT教育ノウハウを元に、人事担当者、研修担当者、DX・AI推進担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者

インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。



