IT技術・戦略DXとは?意味や推進される背景、企業の実態を解説!
2021/09/20 (2022/10/02更新)DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「Digital」の「D」と、変化を意味する「Trans」を英語圏で略したときに使われる「X」を組み合わせた言葉です。2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「IT技術の活用により、人々の生活のあらゆる側面に変革をもたらす」という概念として、最初に提唱したとされています。
近年は一般的に「最新のデジタル技術を駆使した業務プロセスやビジネスモデルの変革」という意味合いのビジネス用語として広く使われています。ただし、明確な定義は決まっておらず、各産業や組織の視点によりさまざまな解釈が存在するため注意が必要です。
一つの基準となるのは、日本でDXが広まるきっかけとなった、経済産業省の『デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン』(2018年)です。同ガイドラインでは、DXの定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より明確かつ具体的に示しています。
スマートフォンの登場などテクノロジーの進化とともに、DXの必要性はこれまでも叫ばれてきました。さらに昨今は新型コロナウイルスの影響で、オンライン上での購買や会話など、今まで対面で行ってきた人々の行動がデジタル上で完結していく流れが加速度的に進んでいます。日常生活はもちろんビジネスの場でも、DXがこれまで以上に重要な役割を果たしていくことは間違いないでしょう。
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では、なぜ今DXが注目されているのでしょうか。背景には、経済産業省が2018年にまとめた「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(以下、DXレポート)の中で提唱された「2025年の崖」と呼ばれる現象があります。
「2025年の崖」とは、既存システムが抱える問題により、2025年を節目に多くの日本企業が直面する危機のことを指しています。DXレポートでは、既存システムの問題を解決しつつデータの活用ができない場合には、2025年~2030年の間に日本経済に年間で最大12兆円(現在の約3倍)の損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしています。
既存システムの問題とは、例えば、システムが事業部門ごとに構築されていて、部門間の連携や企業全体でのデータ活用ができないことや、過剰なカスタマイズによりシステムが複雑化 ・ブラックボックス化していることなどが挙げられます。こうした問題を解決しないまま最先端のデジタル技術を導入しても、効果は限定的になってしまいます。それどころか、データを活用しきれずDXを実現できなければ、市場の変化に対応しきれず、デジタル競争下で生き残ることができなくなります。
ほかにも、複雑化した既存システムは使い続けるだけで高い維持費がかかることや、保守運用の担い手不足により、サイバーセキュリティや事故・災害時にシステムトラブルやデータ滅失・流出が起こるリスクなどが懸念されています。
DXレポートの中では、2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを見直してDXを実現することで、2030年の実質GDPを130兆円超に押し上げるというシナリオが掲げられています。つまり、DXの実現が日本の国際的な成長力の維持・強化に直結しているのです。こうした背景から、DXは日本企業の最重要課題の一つとなっています。
ビジネスにおけるDX
DXを実現するには、どのような技術が必要なのでしょうか。 ここでは、近年活用が進んでいる4つの技術をご紹介いたします。
AI(人工知能)
AIとは、機械が大量のデータからパターンを学習し、高度な判断や予測をする技術のこと。画像認識や音声認識、自然言語処理(プログラミング言語ではない英語や日本語の処理)、交通機関の混雑予測や飲食店の需要予測などで使われています。
5G(第5世代移動通信システム)
「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」を特徴とする、次世代の通信インフラのこと。
IoT
一般的に「モノのインターネット」と呼ばれ、「身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる」仕組みのこと。スマートホームやスマート家電、自動運転車のほか、さまざまな業種で活用が進んでいます。
IoTとは?モノのインターネットの活用事例クラウド
クラウド(クラウド・コンピューティング)とは、インターネットなどのネットワーク経由でユーザーにサービスを提供する形態のこと。通常高額な費用がかかるサーバーなどハードウェアの購入やソフトウェアのインストールが不要で、その都度使う分だけ料金を支払えばよいので、コスト削減に繋がります。
【初心者入門編】クラウドとは?まず押さえたいメリット・デメリットこうした先端技術に注目し、DXに活用する企業は年々増加しています。ここで、DXの実現に向けて各企業がどのような取り組みを行っているのか、その実態を見ていきましょう。
2018年11月1日に財務局が発表した「財務局調査による先端技術(IoT、AI等)の活用状況について」のレポートによると、全国1,273社のうち、3分の2程度(64.7%)の企業が、何らかの先端技術を活用済と回答しました。活用済の先端技術の内訳としては、「クラウド」(39.2%)や「ロボット」(37.1%)が大半を占めています。実際、クラウドへの移行やロボットの活用によって、業務効率の向上やコスト削減を実現した企業も多くあり、ビジネスに欠かせない技術となりつつあります。
その一方で、「活用したくてもできない」先端技術のうち、最も優先度の高い技術としては「ロボット」「AI」「ビッグデータ」の割合が高く、24%~25%に上ります。現状活用できない理由としては、「人材(IT技術者等)の不足」や「費用対効果が低い」という回答が30%~31%と目立ちました。このデータからも、経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題が浮き彫りになっています。
DXは業務からサービスまで見直しが求められる経営改革です。各企業は会社全体の長期的な戦略を決め、既存システムの問題解決や新しいデジタル技術の導入を段階的に進めていくことが重要です。
DXを成功させるためには
DXを成功させるためには、IT人材が不可欠です。しかし、エンジニアなどの人材は採用が困難になっているため、社員をIT人材へと育成する取り組みに力を入れる企業が増えています。
ここでは、DX化のためにIT人材の育成に取り組んでいる企業の事例を紹介します。
社員のITリテラシーを底上げしてDXを推進
DXを推進するためには、全社員のIT知識を一定以上に底上げすることが大切です。IT知識が不足している社員はDX化に消極的な社員が多くなったり、デジタルツールを導入しても活用しきれずに失敗してしまうケースもあります。DX推進のための第一歩として、ITリテラシー向上に取り組んだ企業の事例を紹介します。
三菱ガス化学株式会社
Pythonでのプログラミング基礎研修
ITの力でさらなる業務効率化や生産性向上を図っていくために、組織全体としてITリテラシーを向上させる必要性を感じていました。
今回はIT化やDXの推進によって現場の課題解決を図る前段として、プログラミング基礎研修を実施することにしました。まずは、プログラミングの基礎を学ぶことで「実現(改善)できる未来」をイメージしてもらうこと。そして同時に、「さらにスキルを伸ばしてみたい」と感じてもらうことが目標です。
インタビューをみる日揮ホールディングス株式会社
DX時代に必要な、新入社員向けITリテラシー・情報セキュリティ基礎研修
弊社の社員のなかには、ITリテラシーが高い人も多く在籍していますが、社内全体としてITの知識量にはばらつきがあると感じていました。そこで、社内全体のITリテラシーを底上げするためにも、まずは新入社員研修にIT研修を取り入れてみようと考えました。
研修内容が受講生に好評だったので、新入社員だけではなく、既存の社員に向けてもインターネット・アカデミーの研修を受けてもらいたいと考えています。
インタビューをみる社員が技術力を身につけることで業務効率化を行う
非IT職の社員が技術力を身につけることで、自分の業務の効率化を実現したり、いままでITベンダーなどに外注していた制作・開発業務が内製化できるようになることで生産性を高めている企業もあります。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
オリジナルPython研修(RPAツール実践研修、LINEチャットボット作成)
生産性を上げていくためには社員一人一人が技術力を身に付けなければならないと考えたためです。現在、市場ではDXへの取り組みが急務となっています。当社でも技術力が課題でしたので、全社的にDX人材の育成する必要がありました。
一番の目的は「現場の自動化」ですので、PythonだけでなくVBAやUiPathの研修も検討しましたが、業務効率化を幅広く実施するためにも汎用性の高さで今トレンドとなっているPythonのRPA研修を選びました。
インタビューをみるアンカー・ジャパン株式会社
データ分析自動化のためのPython基礎研修
Pythonで「お客様の声」を分析し、分析結果を製品開発に活かしたいと考えたのが研修を依頼した動機です。
受講者全員プログラミング初心者だったので、弊社の要望に合わせて、カリキュラムやスケジュールを柔軟に組んでくださる研修会社を探していました。インターネット・アカデミーのカリキュラムは、必要知識の良いところ取りをしてくださっていたので、研修をお願いしたいと思いました。
インタビューをみる企業ごとの状況に合わせたDX研修
DX推進のためにはIT人材の育成が欠かせませんが、企業ごとに状況が異なるため、自社の社員のレベルや業務内容に合わせた研修を行うことが大切です。
インターネット・アカデミーでは、お客様の業務や状況に合わせてカリキュラムをカスタマイズすることができます。そのため、業務に関わらない知識を学ぶのに時間を使ったり、難易度が高い内容を学ぼうとして身につかないといった失敗を割けることができます。
専任のコンサルタントが、貴社の業務に合わせた最適なカリキュラムのご提案はもちろん、どのようなカスタマイズができるのかといったご相談も承っていますので、お気軽にご相談ください。
コンサルタントに相談するこの記事の執筆者
インターネット・アカデミー ITビジネスサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・ITトレーニングなど法人向け研修サービスの提供と、就職・転職などの社会人向け通学制スクールの運営を行っている教育機関です。グループ企業を含めると、「制作」「人材サービス」「教育」の3つの事業のノウハウをもとに、ITビジネスを行う現場担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者
インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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