人材育成日本のDX推進の現状と課題について解説

2023/03/31
日本のDX推進の現状と課題について解説

近年多くの企業の間で、デジタル技術の急速な発展やコロナウイルスの世界的流行などによる社会環境の激しい変化に適応し生き残っていくために、デジタル技術を積極的にとりこんだ事業改革(デジタルトランスフォーメーション、DX)が注目されています。それと同時に多くの企業で、DXに関連する取り組みを開始しているものの、なかなか上手くいかない、といった事例もよく散見されます。本記事では、国内のDXへの取り組みの現状と多くの企業が抱えている課題について、改めてまとめていきたいと思います。

本記事は、IPAにより公開されている『DX白書2023』の内容を参考に作成されています。

目次

DX実現に向けた3つのフェーズ

実はDX推進は大きく以下の3つのフェーズに分かれます。フェーズ1、2にあたるデジタイゼーション(Digitization)、デジタライゼーション(Digitalization)はいわゆる「デジタル化」のことをさしており、最終段階のデジタルトランスフォーメーション(DX)はデジタル技術を用いた根本的なビジネスモデルやシステムの改革のことを指します。

DXを達成し成果をあげるためには、自社が今いるフェーズを正しく把握することが非常に大切です。このような段階を意識せずに最終的な目標ばかりみてしまうと、具体的にどのような取り組みから始めるべきかイメージがしづらく、DXのプロジェクトが頓挫してしまう可能性もあります。それぞれの段階ごとに必要な取り組みを着実にこなしていくことが、最終的なDX達成の一番の近道となります。

フェーズ1:デジタイゼーション (Digitization)

デジタイゼーションとは、デジタル技術の導入でアナログ情報をデジタル情報に変換することです。たとえば、伝票など紙で管理していたデータをExcelなどで管理するなどが当てはまります。アナログ情報をデジタル化することで、業務や顧客データの見える化を推進できるようになります。

フェーズ2:デジタライゼーション(Digitalization)

デジタライゼーションは、デジタル技術の導入で業務プロセスを効率化させることです。手入力していたデータを、システムで自動的に収集するなどが当てはまります。デジタライゼーションを行うことで情報を分析して課題の見える化を推進できるようになります。

フェーズ3:デジタル・トランスフォーメーション (DX)

DXは、デジタル技術の導入で業務プロセスを効率化させることです。単なる業務効率化にとどまらず、ITの活用を通じて、ビジネスモデルや組織を変革し、新しい付加価値を生み出すフェーズになります。

日本のDXへの取り組みの現状

本章では日本のDX推進の現状について、日本より早く取り組みが始まったアメリカとの比較を中心に考察していきます。以下で紹介するデータを参照すると、日本国内でもDXに取り組もうとする企業の割合は増えてきている一方、日本とアメリカではDXへの取り組み方に違いがありなかなか成果に結びついていない現状がうかがえます。

DXへ取り組んでいる企業の割合

2022年時点で、DXに取り組んでいる企業の割合はアメリカの77.9%に対して、国内では69.3%と全体的な割合自体はおいついてきています。しかしその内訳をみてみると、アメリカでは従業員100人以上の中小企業でも70%以上と多くの企業でDXへのとりくみが見られる一方、日本ではDX推進のとりくみの割合が企業の規模に相関している様子が観察でき、中小企業におけるDX推進の遅れが顕著であることが分かります。
※出典:DX白書2023

DXへ取り組んでいる企業の割合
従業員規模別DXへの取組状況

DXの取り組みの成果

DX推進の取り組みに対する成果
出典:DX白書2023 DXの取組の成果

実際のDX推進の取り組みに対する成果の実感についてのデータを参照してみると、日本企業の58%はその成果を実感しておりその割合は確実に増えているものの、アメリカの89%と比較すると、まだまだDX推進による効果を実感できていない企業が多いことがわかる。

より詳細に取り組み領域ごとの成果状況をみてみると、デジタイゼーションに相当する「アナログ・物理データのデジタル化」やデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」については、アメリカ企業とほぼ同水準の成果をえられているが、DXに相当する「新規サービスの創出」や「新たなビジネスモデルの開拓」などといった部分でまだ期待されるような成果を得られていないということまで確認することができます。

先端技術の積極的な利用

DXの推進のためには、急速に進化している先進技術の動向をいち早く感知し取組を進めていくことが必要となります。そこで、先端的なデジタル技術を用いた新たなビジネス領域への展開状況について日本とアメリカの企業を比較してみると、日本はアメリカの企業に対して大きく遅れをとっており先進的な技術への感度や対応スピードに差があることが確認できます。具体的にはAIやIoT、デジタルツインといったデジタル技術の活用について、日本企業はアメリカの企業に対して遅れをとっています。
※出典:DX白書2023

AIの利活用の状況
IoTの利活用の状況

人材の確保について

人材の確保について
出典:DX白書2023  DXを推進する人材の「量」の確保
DXを推進する人材の「質」の確保

DXを推進するための人材の確保状況について「量」や「質」の充足度について比べてみると、こちらについても日本企業のほうが「量」「質」ともに人材不足が著しい状況が明らかになります。この人材不足の原因としては、近年国内でDXに取組む企業の割合が増加し、それにあわせて必要な人材に対するニーズが増えていることがあげられます。この人材不足の影響もあり、今後DX推進を目指す企業にとっては人材戦略も非常に重要な要素になることが考えられます。

日本企業のDX推進に関する課題

本章では、前章に紹介した日本のDXの現状を鑑みて、今後日本のDX推進を加速するために認識し、解決していくべき問題について考えられる例を紹介します。これらの例に当てはまる場合は、その課題の解決を図ることでDX推進をよりスムーズに達成できるようになるかもしれません。

DXのための全社的な取り組み

DXへ取り組んでいる企業の割合
出典:DX白書2023 DXの取組状況

日本企業では、全社的な戦略に基づいてDXに取り組んでいるという企業は54.2%となっており、アメリカの68.1%と比較すると劣っていることが分かります。また、この傾向は中小企業になるとさらに顕著になっています。部署ごとや一部の人のみが関わっている、という状況だと、デジタル化は達成できても企業の根本的な「トランスフォーメーション」を実現することは非常に困難になることが予想できます。

DX推進にむけた経営資源の獲得

DXを推進していくためには、経営トップが自ら変革を主導し全社横断で組織的に取り組みを行うことが必要になります。しかしここで、IT分野に見識がある役員が3割以上の割合を日米で比較してみると、日本の企業は30%弱に対して、アメリカは60%ほどと約2倍にのぼることがわかります。このような経営層のITへの見識不足は、経営層のDXへの積極的な関与や業務部門、IT部門との円滑な協働を妨げる要因となり、DXへの阻害となってしまうことが予想されます。そのため、経営層は特に全社的なITへの基本的なリテラシーや見識を高めておくことは非常に重要です。

その他、予算などについても毎年DXのための予算が継続的に確保されている企業の割合をみても日本(23.8%)はアメリカ(40.4%)に大きく劣っており、中長期的なDX計画達成のためには日本企業の多くもDXにむけて継続的な予算の確保が必要になることが考えられます。
※出典:DX白書2023

IT分野に見識がある役員の割合
 DX推進のための予算確保状況

顧客への価値提供実現を指標とした成果評価

人材の成果評価
出典:DX白書2023 顧客への価値提供などの成果評価の頻度

社内でのDX推進を加速させていくためには、「アプリのアクティブユーザー数」や「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)への影響」、「従業員の勤務時間の短縮」などのDX推進において活躍した人材の成果評価が非常に重要になってきます。この点で、日本企業は多くの指標で評価対象外としている企業が3割~7割にものぼっており、アメリカの企業とは大きく異なっていることが分かっています。

DXで活躍する人材の躍動を促すためにも、取り組みに応じた成果評価のシステムを整えることは企業にとって非常に重要になってきています。

人材獲得戦略の構築

前章でも確認したように、DX推進のための人材は現在慢性的に不足している状況であり、この状態は依然としてしばらく続くことが予想されています。そこで、日本企業は中途採用や社員のリスキリング教育はもちろんのこと、アメリカでよく採用されているリファラル採用(自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう手法)や、自らが最低限のリテラシーを身につけたうえでの企業や個人との契約といった、様々なアプローチを幅広く検討していく必要があります。

企業風土について

そもそも企業の風土として、失敗を恐れずに挑戦することが歓迎される風潮であったり、自分の持つスキルが報酬に正しく反映されるシステム、なども急激な社会の変化に対応して企業の変革を目指すうえでは非常に重要です。DXが組織に根付いていくためにはその土台たる企業文化・風土のあり方もDXにふさわしい形に変わっていく必要があります。

社内教育を通じてDX推進をすすめた事例紹介

インターネット・アカデミーのIT研修は、多くの企業にご利用いただいています。今回は、自社で抱える課題を解決しDX推進をすすめた企業の事例を紹介します。

株式会社JALブランドコミュニケーション

株式会社JALブランドコミュニケーション

JALグループ全体が抱える課題の1つが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)化です。例えば、お客様の飛行機利用を容易にするために予約~搭乗の一連の過程をデジタル化し、利便性を向上させたいと考えています。こうした新たな取り組みを行う際に、IT専門職だけでなく、経営者層もITリテラシーを持ち合わせておくことが経営判断を行うために必要不可欠だと考え、この度、インターネット・アカデミーに研修を依頼させていただきました。研修後は、経営者層が基本的なIT用語やトレンドを理解したお陰で、IT専門職が補足説明することなく、提案内容を直接伝えることができるようになったので、業務効率化に役立っています。

インターネット・アカデミーでは、お客様の状況や要望に合わせたデジタル人材育成の研修を提供しています。自社DX推進のためにデジタル人材育成の研修を検討している方は、お気軽にご相談ください。

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