人材育成【DSS特集2】DXリテラシー標準を活用した人材育成のメリット
2023/02/13前回記事では、企業や組織のDX推進を人材・スキル面からサポートするためにDXに必要な人材・スキルをまとめた「デジタルスキル標準」について導入を行い、「デジタルスキル標準」が「DXリテラシー標準」「DX推進スキル標準」からなることを確認しました。
本記事ではまず「DXリテラシー標準」のほうに注目して、具体的な内容を確認していきたいと思います。完全に内容を網羅することはできませんがエッセンスの部分を抜き出して簡潔に内容をまとめています。
本記事を通して「DXリテラシー標準」に対する理解を深め、個人としてはDXに対するアンテナが広がり、かつ企業としてはDXに向けた全社的な枠組みを把握し人材の育成指針についてヒントを得られることを期待します。
目次
「DXリテラシー標準」の概要
改めて「DXリテラシー標準」とはどのようなものなのか、どのような構成になっているかについて概要を示します。
「DXリテラシー標準」は全てのビジネスパーソンが身に着けておくべき能力やスキル・リテラシーに関する標準を示したものとなっており、企業が全社的なDX推進をスムーズに進めていけるように、社員が最低限しっておくべき知識がまとまっています。これによって、様々な社員層に対するメリットが期待されます。
- DX推進や人材育成に関する指針(体系)だてがしやすくなる
- 全社的にDX推進の意義付けを行うことができDXに対する受容性が高まる
- ITに関する最低限の知識を共有することでDXのハードルが下がる
具体的な内容は「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」に分かれています。
「マインド・スタンス」の部分でDX以前にそもそも変化の激しい社会で企業(個人)が新たな価値を創造し続けるために必要な視点・考え方を確認することができ、そのような中で今なぜDXが重要なのかを「Why」の部分で学ぶことができます。そして、「What」「How」の部分で具体的にどのような技術がビジネスの現場でどのように活用されているかについての理解を高めることができます。
「DXリテラシー標準」はどのように役立つのか
そもそも「DXリテラシー標準」とは全てのビジネスパーソンが身に着けておくべき能力やスキル・リテラシーに関する標準を示したものですが、ここでは「DXリテラシー標準」の内容を確認したりまとめられているスキルセットを社員が身に着けることで、具体的にどのようなメリットが期待できるかについてまとめていきます。大きく分けて以下のような具体的なメリットが期待されます。
DX推進や人材育成に関する指針だてをしやすくなる
特に経営層が「DXリテラシー標準」を身に着けることで、自社としてのDXの方向性を思案し社員に示すことができるようになる、というメリットがあります。自社の経営ビジョンと「DXリテラシー標準」をかけ合わせることで、全社的にどのようなデジタルスキル・リテラシーを標準とするべきかを明確にできるので、必然的にDX推進のために必要な取り組みや社員教育に関して方針がたてやすくなります。
全社的なDXによる変化に対する受容性が高まる
こちらはひとつ前の項目と似ていますが実は微妙に異なっています。
具体的に、ひとつ前の項目は「DXリテラシー標準」によって現場の能動性が高まることを述べましたが、こちらはDXに対する受容性が高まることを指しています。社員の階層・年代・職種など問わずに全社的なDXリテラシーを高めておくことで、DXに伴う実務内容の変化などへの対応力が強化され、DXをスムーズに推進できるようになります。この受容性の強化が、DXによる業務効率化・実務生産性の向上に直結する部分もあるので、非常に大きなメリットだということができます。
また社員全体のDXへの関心を高めることで、DXを推進する立場でない社員のDXへのコミットメントを高めることにもつながり、全社的にDXを推進する雰囲気をつくることができます。
DX推進に必要な「マインド・スタンス」
ここからは、具体的に「DXリテラシー標準」の内容について例を交えながら紹介していこうと思います。まず初めにDX推進ひいては企業の持続的な成長のために、組織の構成員に求められる意識・姿勢・行動について、見ていきましょう。
DX推進や企業の持続的な成長のためには、まず常に変化を続ける技術体系や社会環境に適応しようとする姿勢が非常に重要になってきます。個人や組織の既存の価値観・理念を尊重しつつ、常に新たな価値観を取り入れそれに見合うようなスキルを身に着けていこうとする姿勢が、企業の持続的な成長の原動力となります。
また変化に適応し成長を続けていくためには、常識的な発想にとらわれない柔軟な意思決定のもと、常に必要に応じて様々な専門性を持つ人材同士でコラボレーションを実現していく体制が重要になります。もちろんその意思決定や取り組みの基盤として、事実に基づいた判断や顧客目線にたったニーズの把握、そしてスモールステップでのトライ&エラーを繰り返していく姿勢も非常に重要になってきます。
「DXリテラシー標準」では各々の企業が新しい価値を生み出すために、特に重要となるマインド・スタンスを特定し、その浸透方法を検討することが期待されています。
DX推進の「必要性(Why)」
DXを実際に進めていくにあたっては、経営層や担当部署の人々だけがDXについて考えるのではなく、全社的にDXの重要性を理解し受容性を高めておくことが非常に重要となってきます。本章では、各企業がDX推進の意義を明確にし社員一人ひとりのDXへのコミットメントを高めるために、DXの重要性を改めて確認しています。
社会の変化
トレンドの波及やニーズの変化が非常にはやくなっている今日の社会において、人々の生活をよりよくし社会課題を解決していくためには、データやデジタル技術の活用が非常に有用です。
米国の調査会社IDCによると、国際的なデジタルデータの量は2011年にはの約1.8ゼタバイト(1.8兆ギガバイト)であったものが、2020年には約40ゼタバイト、2025年には約160ゼタバイトにまで膨れ上がるということが予想されており、今後さらに規模を増していく大量のデータから、顧客のニーズを的確に把握し最適なサービスを提供し続けていくためにはやはり、デジタル技術の活用は必須になるといってよいでしょう。
実際に気候変動やエネルギー問題、SDGsなどのようなメガトレンドと呼ばれる世界規模での社会問題・社会目標へのアプローチとして、デジタル技術の活用はデータの収集・分析や実際の取り組みの現場など、様々な場面で大活躍しています。
また、このようなメガトレンドに限らずとも海外の企業に目を向けるとAT&T・Amazon・Wal-Martなどを筆頭に、DX(及びリスキリング)を通じて業務効率化・事業改革を果たし競争力を高めている事例を多く見かけることができます。
日本の国内企業は概して、海外と比べてDXの取り組みに関して遅れをとっている傾向がありますが、グローバル化が進み市場の国際化も進んでいる今日においては日本企業もDXを推進し競争力を高めていく必要があります。
顧客・競争環境の変化
今日のデジタル化によって、そもそもサービスを受け取る側の行動や価値観も変化していることも考慮にいれなければいけません。
例えば価値観変化の例として、様々なサービスへのアクセスが容易になったことで、1990年代中盤から2000年代後半に生まれデジタル技術と主に成長してきたZ世代とよばれる年代層は、従来から重視されてきた「所有」よりもむしろ「体験価値」に重きをおいた行動基準にしたがっていると言われます。これにより今日では、車のシェアリングや音楽や服のサブスクリプションサービスなどが大きく成長しています。このように企業は今日の顧客の価値観や行動にあった、広告やサービスの提供を考えていかなくてはいけません。
また、デジタル化によって従来の職種や市場の枠組み・国境をこえたビジネスが広がってきているので、その波にのまれないように多くの企業は新たな競争環境に適応し競争力を高めていくためにもDXを推進する必要があるといえます。
「どのような(What)」技術がDXに関わるのか
ここでは、具体的にDXを推進するイメージを確立するために、DXに関わる技術としてどのようなものがあるのかについて、簡単に確認していきます。本章については、技術項目の簡単な紹介のみとなるため、この項目に基づいた具体的な学習が必要になります。(より詳しい学習項目の確認については、「DXリテラシー標準」本文を参照ください。)
これらについて学習することで、企業の経営ビジョンを達成するためにどのような技術の導入が必要なのかといった判断につなげることができます。また、具体的にDXを推進する際に専門的な人材との協働などをスムーズに行うことができるようになる、あらたにデジタル技術の習得を目指す際に学習の助けになる、といったメリットも期待できます。
本章で登場する技術体系は必ずしもスキルとして扱えるレベルに到達しなければならないというものではなく、実務で活用するかどうか関係なく社員が知識として知っていると、DX推進をスムーズにできるといった立ち位置のものになります。
データの活用
デジタル技術の活用のシチュエーションとして最も一般的なものとしては、データの収集・分析・データを基にした判断、があげられるでしょう。
データといっても世の中で活用されるデータは、数値だけではなく音声・画像・文字などさまざまな媒体があるためそれぞれが、どのように蓄積・活用されているのかを知っておくとデータ活用の可能性の幅を広げることができます。また、様々なデータの分析手法・データの見方・データの抽出・(検定等)データに基づく判断など、について大まかな流れを共通認識として把握していると、現場の人材もデータ活用のイメージを構築でき新たなデータの活用案が生まれるきっかけにもなることが期待できます。
AI
データの活用や意思決定の手法としてより高度で近年注目されているAIについても、ある程度の仕組みや可能性(できること・できないこと)の理解をしていると、専門的な人材と現場の人材(AIを用いて業務を行う人材など)との間の協働がスムーズになります。またDXの一環としてAIを導入するかどうかといった判断を行うためにも、まずはAIについて外観的な学習をしておく必要があります。
クラウド
クラウドはデータやAIを使用したサービスに使用されている技術で、データを保持するためによく用いられているものです。クラウドサービスの仕組みや、自社でハードウェアやソフトウェアなどを保有・管理するオンプレミスとの違いを理解することで、クラウドを用いたサービスの提供形態について体系的に理解することができます。
ハードウェア・ソフトウェア
データの活用以前にそもそもスマートフォンやコンピュータがどのように動作しているかについて、ハードウェアやソフトウェアの観点から理解しておくと、デジタル技術の活用や新規学習がスムーズになります。その他、社員自らが活用している社内システムについて理解を深めることで、普段の業務内でのコミュニケーションを円滑化することが期待できます。
ネットワーク
ネットワークの仕組み、加えてインターネットの仕組みや代表的なサービスを知っていることも前項同様、社内の業務内コミュニケーションの円滑化につながります。またこれらについて理解を深めることで、全社的にDXへの受容性を高めることができます。
IT技術を「どのように(How)」活用するか
こちらは、前章とは対照的に実際の業務内で利用するための知識・スキルで、DXリテラシー標準に沿って学ぶビジネスパーソンが、実際に業務上の作業や判断において利用してほしい内容が示されています。
データの活用事例・ツールの活用
実際の業務において、どのようなデータがどのように活用されうるのかについて事例を学習することで、自らの業務にも応用することができるようになります。例えば、EC事業者の物流に関して、販売傾向や輸送に必要な労力などのデータから最適な在庫配置や新たな販売戦略の打ち出しなどをおこなえる、といった事例などがあげられます。様々な業種でさまざまなデータの活用事例を学習することで、自社のデータ活用について有用なヒントを得られるかもしれません。
またその他、業務の中で日常的に用いられているコミュニケーションツール・業務支援ツールなどについても、自社にあった最適なものを選択することが日々の業務効率化に大きく寄与します。
セキュリティ・モラル・コンプライアンス
デジタル技術を安全に活用するために、情報セキュリティやデジタル社会に対応したモラル・デジタル技術に関連する法的な規制などについて、最低限の知識を全社で共有しておくことは必須といえます。これらの教育を最低限行うことができないと、安全にデジタル技術を運用することができないので、非常に重要な項目といえます。
デジタルリテラシー向上によりDXを進めた事例
これまで、「DXリテラシー標準」の内容に沿ってDX推進の基礎作りのために必要な学習項目について確認してきました。ここでは、インターネット・アカデミーの研修を通して実際に基礎的な部分から社員のリテラシーを高めDXを推進した事例を確認してみましょう。
株式会社 横河ブリッジ
弊社では2020年頃から新型コロナウイルス流行の影響でDXについて世間で言及されることが多くなったことをうけ、自社でもDX化を検討していたものの最初の一歩をどう踏み出せばよいのか分からない状態でした。踏み込んだシステムの導入などは、専門業者へ委託を考えておりましたが、我々の導入イメージを正確に伝えるための「ITの基礎知識」が不足していることに気が付きました。こうした経緯から、まずITの基礎知識を学べる研修機関はないかと探していたところ、インターネット・アカデミーにたどり着きました。
研修前は社員がITの基礎知識を学び、用語を少し理解できるレベルになっていれば十分だと考えていました。しかし研修後は、当初の予想をはるかに超えて、社員たちがIT技術を活用し社内の業務効率を向上させるアイデアを提案してくれるようになったのです。
株式会社JALブランドコミュニケーション
弊社でもDXに関して課題を抱えており、例えば、お客様の飛行機利用を容易にするために予約~搭乗の一連の過程をデジタル化し、利便性を向上させたいといったアイデアを実現させるためには、IT専門職だけでなく、経営者層もITリテラシーを持ち合わせておくことが経営判断を行うために必要不可欠だと考え、この度、インターネット・アカデミーに研修を依頼させていただきました。
受講した執行役員本人からは、「研修を通してIT・Web業界のトレンドがわかり、経営判断の際に重要な知識を教えていただいた」と聞いています。また経営層が基本的なIT用語やトレンドを理解したお陰で、IT専門職が補足説明することなく、提案内容を直接伝えることができるようになったので、業務効率化に役立っているという側面もありました。2日間という短期間ではありましたが、有意義な時間を過ごすことができたようで、今回の研修もインターネット・アカデミーにIT研修をお願いしてよかったと思っています。
インターネット・アカデミーでは、お客様の状況や要望に合わせたデジタル人材育成の研修を提供しています。自社DX推進のためにデジタル人材育成の研修を検討している方は、お気軽にご相談ください。
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この記事の執筆者
インターネット・アカデミー ITビジネスサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・ITトレーニングなど法人向け研修サービスの提供と、就職・転職などの社会人向け通学制スクールの運営を行っている教育機関です。グループ企業を含めると、「制作」「人材サービス」「教育」の3つの事業のノウハウをもとに、ITビジネスを行う現場担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者
インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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