人材育成【DSS特集1】デジタルスキル標準(DSS)とはどのようなもの?
2023/01/30近年多くの企業でDX推進の必要性がさけばれており、部署の設置・社員へのIT教育などの具体的な取り組みを始めている企業も少なくありません。今後多くの企業がDX推進を成功させ成長を続けていくためには、企業全体のDXへの関心・リテラシーを高め、かつDX推進において中心的な役割を果たすことのできる高い専門性をもった人材の育成・確保することが必要になってきます。
そんななか2022年12月21日、企業や組織のDX推進を人材・スキル面からサポートするために、DXに必要な人材・スキルをまとめた「デジタルスキル標準」が経済産業省とIPAから策定されました。この「デジタルスキル標準」はDX推進に必要な人材・スキルをまとめることで、企業の人材育成・獲得の指針となることが期待されています。
本記事ではこれから数回にわたって、具体的に「デジタルスキル標準」とはどういうものか、「デジタルスキル標準」に基づくとDX推進のためには具体的にどのようなスキルや人材が必要になるのかについてまとめます。これらの理解を通じて、DX推進の道筋についてより具体的なイメージをつかめることを期待します。
目次
「デジタルスキル標準(DSS)」の構成
DX推進のために必要な人材の育成・確保に関する指針を与えてくれる「デジタルスキル標準(DSS)」ですが、これ自体は対象とする人材の違いによって区別された二つの要素で構成されています。
片方は、全てのビジネスパーソンが身に着けておくべき能力やスキル・リテラシーに関する標準を示した「DXリテラシー標準(DSS-L)」であり、もう一方は「DX推進スキル標準(DSS-P)」といって特にDX推進の中心的な立場となる人材について、その役割と必要スキルセットをまとめたものとなっています。
「デジタルスキル標準」全体にまとめられている必要スキルを理解することで、DXに必要なスキルを総合的に理解でき、会社の人材育成・確保に対する指針を与えてくれることが期待されています。またここでまとめられているスキルセットは、特定の活用範囲(状況・業種・職種)に限定されたものではなく、汎用性が高くあらゆる企業において当てはまる内容になっていることも特徴です。
「デジタルスキル標準」の構成要素となっている「DXリテラシー標準」「DX推進スキル標準」の具体的な内容については次回以降の記事でまとめますが、本記事ではそれぞれの具体的な内容構成についてまとめ、「デジタルスキル標準」の全体像をより明らかにしていこうと思います。
「デジタルスキル標準」はどのように役立つのか
そもそも「デジタルスキル標準」とは企業のDX推進を人材・スキル面で支援するために策定されたものですが、ここでは「デジタルスキル標準」の内容を確認したり、まとめられているスキルセットを社員が身に着けることで具体的にどのようなメリットが期待できるかを示していきます。
まず「デジタルリテラシー標準」に記載されているITに関するリテラシーやスキルを社員の標準スキルとすることで、全社的な業務レベルの底上げやDXに対するコミットメントを高めることにつながります。実際、研修を通じてデータ分析などに関する一般社員のリテラシーを高めることで、社員のその他のデジタルスキル向上への意欲を高めることができたり、データ分析を利用したサービスの改善案などのアイデアが現場から上がるようになったり、といった事例も存在します。
その他にも、企業のDXを通じて達成したい経営ビジョンから、DX推進に必要な人材の要件を明確化でき、それに基づいた人材育成・確保施策が検討しやすくなる、といったメリットもあげられます。
「DXリテラシー標準」の概要
ここでは、全てのビジネスパーソンが身に着けておくべき能力やスキル・リテラシーに関する標準を示した「DXリテラシー標準(DSS-L)」について、簡潔にどのような構成となっているのかを確認していきます。
「DXリテラシー標準」は企業が全社的なDX推進をスムーズに進めていけるように、社員が最低限しっておくべき知識がまとまっています。これによって、DX推進や人材育成に関する指針(体系)だてがしやすくなる、全社的にDX推進の意義付けを行うことができDXに対する受容性が高まる、ITに関する最低限の知識を共有することでDXのハードルが下がる、などといった様々な社員層に対するメリットが期待されます。
具体的な内容は「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」に分かれています。「マインド・スタンス」の部分でDX以前にそもそも変化の激しい社会で企業(個人)が新たな価値を創造し続けるために必要な視点・考え方を確認することができ、そのような中で今なぜDXが重要なのかを「Why」の部分で学ぶことができます。そして、「What」「How」の部分で具体的にどのような技術がビジネスの現場でどのように活用されているかについての理解を高めることができます。
繰り返しにはなりますが、これらの構成によってDX推進の意義付け・動機付け・足場づくりへのヒントを得ることを期待できます。学ぶべきそれぞれの具体的内容については、次回以降の記事でも紹介しますので、ぜひそちらをご覧ください。
「DX推進スキル標準」の概要
DX推進の中心的な立場となる人材について、その役割と必要スキルセットをまとめた「DX推進スキル標準(DSS-P)」について、簡潔にどのような構成となっているのかを確認していきます。
「DX推進スキル標準」はDX推進のために必要な人材像を明確にしめすことによって、各企業が各々のビジョン達成のために必要な人材を正しく把握し、人材の育成・確保の施策をたてることをサポートする役割が期待されています。
具体的には、以下の図に示すようにDX推進の中心的となりうる人材の類型を5つに大別し、それぞれの類型ごとに場面に応じて果たしうる役割(「ロール」)を示したのちに、それぞれのロールに必要なスキルセットを具体的に提示しています。
それに加え、それらのスキルセットを身に着けるために必要な学習項目まで明確にしめしてあるので、企業が具体的に必要な人材の育成を試みる場合に大いに役立つことが期待されます。
具体的な類型ごとの人材像やロールに応じたスキルセットについては、次回以降の記事で紹介していくのでぜひそちらもご覧ください。
DX推進のための人材育成の事例
インターネット・アカデミーのIT研修は、多くの企業にご利用いただいています。今回は、社員のIT教育に取り組み「デジタルリテラシー標準」を高めた企業の事例を紹介します。
株式会社ベルメゾンロジスコ
弊社は通販に特化した物流センターを運営していますが、課題が主に二つありました。1点目は、お客様に最適な提案をするために、従業員のIT知識の底上げが必要ということでした。単なる物流のサービスの提供にとどまらずクライアントのEC業者様のパートナーとして、webマーケティングなどの知識も加えながらより効果的で包括的な物流面の提案できるようになる必要がありました。2点目は、データの活用です。データの宝庫ともいえる物流の現場でさらなる業務改善を狙っていくには、例えば工数が多い要素を調べるなど多変量解析的なアプローチを強化しなければなりません。そのためには、データを解析できるデータサイエンティストが不可欠でした。
研修を通してITについて一般的な内容から幅広く教えていただき、データサイエンスやWebマーケティングのスキルを身に付けていくことに関して、より多くの社員が興味を持ってくれました。次に何を勉強すべきか、どこを深堀して学びたいかといったところも明確になってきています。物流の現場では研修内で触れたツールを使って「こんなことができるのではないか?」といったアイデアも出てきていて、手ごたえを感じています。
インターネット・アカデミーでは、お客様の状況や要望に合わせたデジタル人材育成の研修を提供しています。自社DX推進のためにデジタル人材育成の研修を検討している方は、お気軽にご相談ください。
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この記事の執筆者
インターネット・アカデミー ITビジネスサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・ITトレーニングなど法人向け研修サービスの提供と、就職・転職などの社会人向け通学制スクールの運営を行っている教育機関です。グループ企業を含めると、「制作」「人材サービス」「教育」の3つの事業のノウハウをもとに、ITビジネスを行う現場担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者
インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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