人材育成IT人材育成に役立つITスキル標準(ITSS)
2024/01/24
様々なクラウドサービスや自動化ツールが普及している今、社員のITスキルが企業の競争力に直結します。しかし、DX化やリスキリングが話題になっている現在において、要求されるITスキルを満たしている社員が充足している企業は少ないと言えるでしょう。そのため、企業には社員個々のスキルを管理し、育成することが要求されています。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は、ビジネスで通用するIT人材育成のために必要なスキルを明確にし、体系的に整理した「ITスキル標準(ITSS)」を定義しています。ITスキル標準は、高い専門性を持ち、社会的にも評価される強い個人をプロフェッショナルとして育成すると同時に、スキルが下位レベルにある社員の成長を促し、市場で活躍する技術者を育成することを目標としています。
目次
ITスキル標準(ITSS)とは

ITスキル標準(ITSS)は、IT人材を育成するうえでのスキル指標としての役割を持ちます。具体的にはITに関連する11の職種と35の専門分野を定義し、それぞれで7段階にレベル分けをしました。これらの枠組みを活用することで個々の人材のスキルを管理し、会社の競争力を高めていくような人材の育成につなげることができます。
また、人材の評価という観点でもITスキル標準を活用することができます。一般に、スキルレベルが向上し専門的になっていくことで、スキルの適正な評価は困難を極めます。そこでITスキル標準を参照することで、非IT産業、IT産業に関わらず汎用的に通用する認定制度としての役割を同時に担うことができます。
また、育成結果を適正に評価することは、個人のさらなるスキルアップ促進にも結び付けることができます。
ITスキル標準のレベル

ITスキル標準で定義される7段階のレベルのうち、レベル1から3までは、情報処理技術者試験の合格をもってレベルを判定します。下位レベルの人材には標準的な基礎能力を明示し、担当業務に捉われない幅広い知識の修得を促進します。
レベル1~3は試験でスキルレベルを判断し、レベル4は情報処理技術者試験の合格に加えて業務経験等で判定します。レベル5からは業務成果や実績をベースにレベルを判定します。上位レベルの人材には、高度なスキルを有していることはもちろん、後進にそのスキルを伝えて育成することを目指しています。
なお、ITスキル標準のレベル定義は以下のようになっています。
レベル | 定義 |
---|---|
レベル1 | 情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。 |
レベル2 | 上位者の指導の下に、要求された作業を担当する。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。 |
レベル3 | 要求された作業を全て独力で遂行する。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有する。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる。 |
レベル4 | プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤとして認められる。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる。 |
レベル5 | プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内においてテクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレーヤとして認められる。 |
レベル6 | プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレーヤとして認められる。 |
レベル7 | プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレーヤとして認められる。 |
ITスキル標準の職種と専門分野
ITスキル標準の職種は以下の11種類に分類され、各職種ごとに専門分野が存在します。
マーケティング
マーケティングは、市場動向を予測しビジネス戦略を企画・立案します。事業、製品、サービスを分析し、事業戦略や実行計画、販売戦略を構築します。
- マーケティングマネジメント
- 販売チャネル戦略
- マーケットコミュニケーション
セールス
セールスは顧客の経営方針を確認し、課題解決策やビジネスプロセス改善を提案します。ソリューションやサービスの提案を通じて成約し、良好なリレーションを築き顧客満足度を向上させます。
- 訪問型コンサルティングセールス
- 訪問型製品セールス
- メディア利用型セールス
コンサルタント
コンサルタントは知的資産とコンサルティング手法を駆使し、顧客の経営やIT戦略の策定のカウンセリングや提言を行い、ビジネス戦略やビジョンの実現に寄与します。
- インダストリ
- ビジネスファンクション
ITアーキテクト
ITアーキテクトはビジネスとITの課題を分析し、ハードウェアやソフトウェア技術を駆使することでビジネス戦略を実現するITアーキテクチャを設計します。設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成し、開発・導入が可能かを実現性を踏まえて評価します。
- アプリケーションアーキテクチャ
- インテグレーションアーキテクチャ
- インフラストラクチャアーキテクチャ
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントはその関連技術やビジネスマネジメント技術を活用し、プロジェクトの提案から終結までを担当します。
- システム開発
- ITアウトソーシング
- ネットワークサービス
- ソフトウェア製品開発
ITスペシャリスト
ITスペシャリストはハードウェア、ソフトウェア関連の専門技術を活用し、顧客の環境に最適なシステム基盤の設計、構築、導入を実施します。
- プラットフォーム
- ネットワーク
- データベース
- アプリケーション共通基盤
- システム管理
- セキュリティ
アプリケーションスペシャリスト
アプリケーションスペシャリストは、特定の業務や一般業務において、アプリケーション開発やパッケージ導入の専門技術を駆使し、業務課題に対するアプリケーションの設計、開発、構築、導入、テスト、および保守を担当します。
- 業務システム
- 業務パッケージ
ソフトウェアデベロップメント
ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウェアエンジニアリング技術を駆使し、マーケティング戦略に基づいた市場受容可能なソフトウェア製品の企画、仕様決定、設計、開発を主に行います。
- 基本ソフト
- ミドルソフト
- 応用ソフト
カスタマーサービス
カスタマーサービスは、ハードウェアとソフトウェアに関する専門技術を駆使し、顧客の環境に適したシステム基盤の導入、カスタマイズ、保守、修理を担当し、顧客のシステム基盤の管理とサポートを提供します。
- ハードウェア
- ソフトウェア
- ファシリティマネジメント
ITマネジメント
マーケティングは、市場動向を予測しビジネス戦略を企画・立案します。事業、製品、サービスを分析し、事業戦略や実行計画、販売戦略を構築します。
- 運用管理
- システム管理
- オペレーション
- サービスデスク
エデュケーション
エデュケーションは、担当分野の専門技術と研修に関連する専門技術を活用し、ユーザのスキル開発要件に合致した研修カリキュラムや研修コースのニーズの分析、設計、開発、運営、評価を実施します。
- 研修企画
- インストラクション
ITスキル標準を活用した人材育成
IT人材育成をする際の選択肢として、研修があります。社内外で行うIT研修によって、現状持っているスキルをさらに向上させたり、別の職種や専門分野のスキル習得できます。
その一方で、無計画な研修は金銭的にも時間的にも無駄になります。また、社会的にDX推進をしていこうという風潮が広がる中で、IT人材育成の後れは企業の競争力の低下に影響を及ぼします。
そこで提案したいことは、ITスキル標準を活用したキャリアパスを構築することです。ITスキル標準は、一般的に要求されるITスキルを体系的にまとめたものになっています。そのため、社員がどの段階にいるかを把握しやすくするとともに、今後必要な研修やスキル向上の方針を明確に定めることができます。これにより、企業は無駄な研修を避けつつ、業務に必要なスキルを効率よく習得できます。また同時に、社員の将来に対する見通しが良くなり、さらなるスキルアップ促進が狙えます。
インターネット・アカデミーでは、ITスキル標準に基づいた研修に対応しています。社員のキャリアパスに応じて、研修内容のカスタマイズもできます。
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インターネット・アカデミー ITビジネスサプリ編集部
インターネット・アカデミーは、IT研修・ITトレーニングなど法人向け研修サービスの提供と、就職・転職などの社会人向け通学制スクールの運営を行っている教育機関です。グループ企業を含めると、「制作」「人材サービス」「教育」の3つの事業のノウハウをもとに、ITビジネスを行う現場担当者の皆様にとって役立つ情報を発信しています。
監修者

インターネット・アカデミー 有村 克己
「カシオ計算機」「小学館」などの大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学やエコーネットフォーラムでの講演など、産学連携活動にも従事。エコーネットコンソーシアム「ECHONET 2.0技術セミナー検討WG」委員。
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