デジタルスキル標準に即したDX人材育成セミナーレポート

2023/08/18
講演者:インターネット・アカデミー 金正煒
デジタルスキル標準に即したDX人材育成

本記事は、2023/7/27にインターネット・アカデミーが開催した「デジタルスキル標準に即したDX人材育成セミナー」の一部を紹介したものです。

デジタルスキル標準(DSS)とは?

「デジタルスキル標準」とは、すべてのビジネスパーソンがDXに関するリテラシーを身につけ、変革により行動できるようになるためにIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が立てた指針のことです。Digital Skill Standardsの頭文字を取って、「DSS」と呼ばれることも多いです。

デジタル人材が量・質ともに不足している

デジタルスキル標準が打ち出された背景には、「現場でDX人材が不足している」「経営層からDX推進を進めてほしいと言われてもうまく進まない」といった課題を多くの企業で抱えていることが挙げられます。こうした現状はデータにも如実に現れており、IPAが発行した「DX白書2023」によると、約90%の企業がDX人材の量、質が不足していると回答しています。

現状の課題を解決し、DXを実現するために重要なことは以下の2つが挙げられます。

  • 経営層を含め、全社員がDXへの理解がある状態にする
  • DXを推進できる専門性をもった人材がいる状態にする

こうした状態を各企業が実現するためのロードマップになっているのが、今回発表されたデジタルスキル標準であると言えます。

デジタルスキル標準の分類

デジタルスキル標準は、企業が段階的にDX化を進められるように、「DXリテラシー標準」と「DXスキル標準」の2つを定義しています。

DXリテラシー標準

DXリテラシー標準では、全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準を定めています。これは、「上述した経営層を含め、全社員がDXへの理解がある状態にする」ことに対応しています。

これまでは、ITに関する知識やスキルは専門領域と考えられていて、エンジニアやITに関わる部門以外の職種では必要ないと考えられていました。しかし、新型コロナウイルスの流行に伴うテレワークの発達や働き方改革のもと、今や全社員が基本的なITに関する知識やスキルを身につけ、自分事として考える必要があるのです。

DXリテラシー標準で定義されているスキル・知識

DXリテラシー標準では、以下の4つに分類してスキル・知識を身につけることを目標としています。

  • DXの背景(Why)
  • DXで活用されるデータ・技術(What)
  • データ・技術の利活用(How)
  • マインド・スタンス

1. DXの背景(Why)

社会の変化、顧客価値の変化、競争環境の変化など、IT技術の発達に伴い様々なことが日々変化しています。こうした変化にいち早く対応し、なぜデジタルスキルを身につけていかなければならないのかを理解することで、DX化をより効果的に進めることができます。

2. DXで活用されるデータ・技術(What)

IT技術が発達したことで、社会における様々なデータを扱う機会に遭遇することとなります。データを読み、説明するスキル、大量のデータを扱うスキル、さらにはデータによって判断するスキルが要求されます。また、データに関連して、これらを扱うAIやクラウド、ハードウェア/ソフトウェア、ネットワークの知識などのデジタル技術も身につける必要があります。

3. データ・技術の利活用(How)

学んだ知識や得られたスキルを業務に活用できなければ、DX化が成功したとは言えません。データ/デジタル技術の活用事例を学ぶことはもちろん、実際に社内で活用しているツールを利用することも挙げられます。また、こうしたツールなどを活用する上で、セキュリティ、モラル、コンプライアンスに関する知識を持つことも重要です。

4. マインド・スタンス

1.~3.で挙げられた内容を支える土台になるのが、マインド・スタンスの項目になります。DXという新しいことにチャレンジする上で、どういったマインド・スタンスで臨むのかで、せっかく進めたDX化の効果があまり得られなかったり、逆に思わぬところで大きな効果を挙げられたりする可能性があります。

DX推進スキル標準

DX推進スキル標準では、DX人材を5つの職種に分類し、各職種ごとに役割を定義しています。これは上述した、「DXを推進できる専門性をもった人材がいる状態にする」ことに対応しています。

先ほどのDXリテラシー標準と異なり、DX推進スキル標準では、エンジニアなどの社内のDX人材に専門性を高めてもらい、社内のDX推進に貢献してもらうことを目的としています。また、自社の業務内容に応じて、必ずしも5つの職種を全てそろえる必要はなく、また、業種によってはここで挙げられていない職種が必要になる場合も考えられます。

DX推進スキル標準で定義されている分類・ロール

上述した通り、DX推進スキル標準ではDX人材を以下の5つの職種に分類しています。さらにその中でも、必要なスキルや知識に応じて、合計15個のロールに分類して考えています。

  • ビジネスアーキテクト
    • 新規事業開発
    • 既存事業の高度化
    • 社内業務の高度化・効率化
  • デザイナー
    • サービスデザイナー
    • UX/UIデザイナー
    • グラフィックデザイナー
  • データサイエンティスト
    • データビジネスストラテジスト
    • データサイエンスプロフェッショナル
    • データエンジニア
  • ソフトウェアエンジニア
    • フロントエンドエンジニア
    • バックエンドエンジニア
    • クラウドエンジニア/SRE
    • フィジカルコンピューティングエンジニア
  • サイバーセキュリティ
    • サイバーセキュリティマネージャー
    • サイバーセキュリティエンジニア

1. ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトは、「DX推進プロジェクト全体を把握し、戦略・プロセスを設計する人材」と定義されています。他4つの職種と密接に関わり、DX推進のリーダーとしてプロジェクトを進めていくため、戦略策定やプロジェクトマネジメント、データ利活用などのスキルが求められます。

2. デザイナー

デザイナー

デザイナーは、「製品やサービスのコンセプト・開発プロセスをビジネス・顧客視点で策定し、それらを体現するデザインを担う人材」と定義されています。サービスや製品を設計するうえで、コンセプトやブランドの確立や、ユーザーにとって使いやすい内容かなども重要になります。そのため、デザイナーには顧客理解、マーケティング、設計などのスキルが求められます。

3. データサイエンティスト

データサイエンティスト

データサイエンティストは、「DX推進においてデータを活用するために、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材」と定義されています。PythonやRSAなどのスキルを活用してデータを分析するスキルはもちろんのこと、データを用いて社内でコンサルティング、ディレクションができることが目標とされています。

4. ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、「DX推進においてデータを活用するために、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材」と定義されています。実際に企画を立てたものを実現する役割であり、ソフトウェアの設計や開発に関するスキルなどが高度に求められる人材となります。

5. サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティは、「サイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材」と定義されています。DX推進の過程でツールの導入や開発をした際に絶対に必要になるのがセキュリティ問題です。セキュリティマネジメントやクラウド・インフラに関するスキルが求められます。

スキルのカテゴリー化で優先順位を明確に

IPAは、各職種が具体的にどういったスキルを身につけたらよいのかを明確にするために、「ビジネス変革」「データ活用」「テクノロジー」「セキュリティ」「パーソナルスキル」の5つにカテゴリーと、12個のサブカテゴリー、49個のスキル項目を定義しています。これに基づいて、自社の業務内容と照らし合わせながらどういったスキル項目を優先的に身につけていくかを明確にする必要があります。インターネット・アカデミーでは、各ロールごとに必要なスキル項目の優先順位をマッピングした資料をご用意しております。少しでも興味がありましたら、お気軽にインターネット・アカデミーにお問い合わせいただければと思います。

IT研修でDX推進に成功した企業の事例

DX推進をするうえで、優秀なIT人材を採用することも選択肢の一つとして挙げられますが、会社規模や予算の都合で難しい場合も多いです。こうした場合、DX人材の自社育成が選択肢として考えられます。自社で人材育成をするメリットとして、研修のノウハウを自社に残せることが挙げられます。インターネット・アカデミーでは、これまで様々な法人のIT研修を担当してきており、研修事例の一部をご紹介いたします。

IT研修でDX推進に成功した企業のコメント

株式会社小学館

研修の最終目的は、Web・アプリの基礎スキルを底上げし、全社としてデジタル化の波に対応し、求められるものを求められる形でスピード感をもって伝えられるようになる、という点にありました。基礎から実践まで体系的に学ぶことができたのが非常に有意義だったと話していました。
インタビューを見る

三菱ガス化学株式会社

ITの力でさらなる業務効率化や生産性向上を図っていくために、組織全体としてITリテラシーを向上させる必要性を感じていました。今回の研修で知識を得たことで、「この技術をこういったことに活用したい」などの前向きな意見が多く出てくるようになりました。
インタビューを見る

DX・リスキリングに役立つ助成金制度

DX推進のためのIT研修を実施したいが、研修費用が負担となりなかなか進まないケースは多くあります。こうした悩みを抱える企業にオススメなのが、助成金制度の活用です。厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、デジタルスキル標準を達成するためのIT研修に活用できるコースが多数あります。ここでは、インターネット・アカデミーのIT研修で活用できる3つの研修をご紹介いたします。

  1. 事業展開等リスキリング支援コース
  2. デジタル化による業務の効率化に取り組むための人材の育成に対しての訓練経費や賃金の助成が行われます。もっとも高い助成率の制度です。

  3. 人材育成支援コース
  4. 正規・非正規を問わず自社の社員に対して、職務に関連した知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に助成されます。

  5. 人への投資促進コース
  6. 企業における人材育成の一助として様々な助成メニューがあり、「デジタル人材の育成に活用できる訓練」も含まれます。

これらの助成金制度の大きな特徴は、助成率が高いことにあります。研修費用に対する助成率は最大75%となっており、また、研修を受講している時間に応じて支給される賃金助成も、1人1時間あたり960円となっており、他の助成金よりも高い金額が支給されます。

デジタルスキル標準に即したDX人材育成

インターネット・アカデミーでは、助成金申請業務をサポートする支援システムや、助成金申請についてのご相談も承っています。個別に助成金支給額シミュレーションもご提供していますので、助成金を活用したIT研修を検討しておりましたら、お気軽にご相談ください。

セミナー講師

金正煒
インターネット・アカデミー ITコンサルタント

500社以上の企業のIT教育をコンサルティングした実績をもつ。
エコーネットコンソーシアムフォーラムやLPI日本支部共催セミナーでの関連技術についての講演を担当。 Oracle Certified Java Programmer Silver SE 8、Python3エンジニア認定基礎試験、PHP技術者認定資格など、多数のIT資格を保持。

デジタル人材育成・助成金のお役立ち資料をダウンロード

デジタル人材育成や助成金活用のお役立ち資料などをまとめてダウンロードしていただけます。コンサルタントへの無料相談をご希望の方はこちらからお問い合わせください。

たとえばこんな相談ができます
  • DX人材の育成&事例紹介 リスキリングのロードマップ付き
  • デジタル人材育成に使える助成金制度
  • デジタルスキル標準 役割別おすすめ講座
資料ダウンロードはこちら
会社名必須
部署名必須
お名前必須
電話番号必須
メールアドレス必須

個人情報の利用目的についてご同意いただいた場合のみ、「同意して進む」を押してください。

このページの上へ