物事には必ず「間」が存在する①
-Linuxを通してどんな技術にも強いエンジニアになる-
執筆者:岡田賢治

こんにちは。岡田と申します。普段、LPIの資格試験の普及をお手伝いしている者です。ここではIT技術全体的な観点から、Linuxの有用性を説明していきたいと思います。
今回のコラムは、「間(あいだ)」の話になります。エンジニア市場において、自分に対してどう「付加価値」をつけるか?という話です。エンジニアの方のみならず、エンジニアをマネジメントしている経営層の方や、人事の方にも役に立つ話であると考えています。
技術のスキルマップ
この記事を読んでいる方は、現役のエンジニアの他、エンジニアのマネジメントを行なっているリーダや、人事の方と想定しています。エンジニアの方も、できればエンジニアの初心者、まだエンジニアリングを始めて日が浅い人に読んでいただけたら、と思っています。
当方のようにSESということを生業とすると、必ず出てくるのがスキルシートです。どんな案件で、どのようなポジションで、その時に用いた技術を、どれくらい(期間)行なったか?というのの一覧をスキルシートとしてまとめます。過去の経歴はもちろんですが、新しい分野に進みたい、また、抱えているエンジニアを向かわせたい場合は、新たにスキルを習得するために、セミナーに行ったり社内で学習会を開いたりします。
完全に余談ですが、会社が持っている自分のスキルシート以外に、自分でスキルシートを管理しておいた方がいいです。会社の仕事以外で身につけたスキル等も管理できますし、副業・転職の時に大きく役に立ちます。
そのスキルを効率的に学習するときに、しばしば「スキルマップ」を参考にします。その分野でどのようなトピックがあり、それらがどのように関係し、どんなトピックを学習したらいいかを可視化しています。最近では、DevOpsの「スキルマップ」を見たことがあります。ただ、これをLinuxで実現しようとすると、少々難があります。
Linuxのスキルマップ
では、エンジニアの皆さんが自分のスキルマップを考えた時、どのようになるでしょうか?大体、次の図1のどちらかのような形になると思います。これは、これから学習するスキルマップを想定しています。

図1として、2通りの書き方をしました。大体、最初に〇〇〇を学習し、次に△△△を学習し・・・という流れでこのような書き方になります。大体授業コースには、「初級」とか「初心者コース」という名前を冠しています。果たして、これは正しいでしょうか?
先ほどLinuxのスキルマップは少々難があると記述しました。初心者に対して、Linuxを伝えていくにはどのように教えていくべきか?というスキルマップです。自分が学習した順序、自分が理解しているトピックの関係性を図示しようとして・・・できませんでした。
自分が必死に考えたLinuxの次のスキルマップは、次のようなイメージのものです。

非常にごちゃごちゃしていますね。ありとあらゆるトピックが混ざり合っています。前回の記事で、Linuxはとっつきづらい、と書きましたが、まさしくこれです。
このようにしか図示できなかった原因は、Linuxの特徴にあります。Linuxは、知識に階層化が存在しません。「とりあえず、ここまでわかっていればいい」の「ここまで」が非常に広い範囲で存在します。
その広い範囲を理解しないで、Linuxの利用・メンテナンスを開始するとどうなるか?たちまちわからないことだらけです。わからないことがわからないことを呼び、結局何もわからない。そして、学習している側は「ウンザリして」学習をやめてしまいます。
私も、この「わからない、が続くことによる、ウンザリ」を回避するために、スキルマップを考え直したり、順序・トピックの切り口を何度も考え直しましたが、結局無理でした。これが、Linuxが難しいといわれるゆえんです。
コンピュータ業界で、この「知識の階層化」を非常にうまくやっているのが、Apple社です。Apple社のUIは、昔からわかりやすく初心者でも馴染みやすいと評判でした。iPodやiPhoneの登場で、その意味を理解した方も多いと思います。
Apple社のUIおよびコンピュータの「使わせ方」における方針は、「ユーザはこれ以上のことを知る必要がない」という大胆な階層化による分断です。その分断による、ある意味親切、ある意味お節介は、ユーザを助けたが故iPhoneなどのヒットにつながっているのでしょう。逆に、そのお節介が不自由と感じる人たちは、Apple社のUIが嫌いです。
話がそれましたが、Linuxはとにもかくにも知識の階層化が難しいという側面があります。
まとめ
本記事では、スキルシート・スキルマップから、技術的スキルの階層化という観点でLinuxを見てみました。しかし、この階層化の問題点が、技術という分野では非常に役に立つことがあります。次回は、その役に立つ部分を紹介します。
執筆者
岡田 賢治
SESでエンジニア業務に従事する傍ら、LPIの資格試験の普及・コミュニティ活動にも関わる。
LPIでの講演実績、IT技術書の執筆多数。8年間の専門学校非常勤講師としての実績をもつ。
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